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高町亜美の物語  作者: 大仏さん
第二章―契約者―
10/31

―予感―

ハ「今回はどんな話?」


作「適当にブラブラする話。後は、もしかしたらなにかハプニングに巻き込まれるかも知れない様な気がする」


亜「アバウト過ぎでしょ」


作「和服で刀持ってて、ツインテールって可笑しくね?」


亜「しろって言ったのあんたじゃん!」


作「そうだけどさ・・・やっぱ・・・なんかミスマッチな気がしてさ」


亜「分かってるよ!だから嫌だったよ!」


ハ「それって、単に戦う時もその髪型だからじゃない?」


亜・作「?」


ハ「だから、戦う時は気分を変えるっていうか、戦闘モードっていうか、髪型を変えればおかしくないんじゃない?」


作「あ~・・・じゃあ、ポニーテールでいい?」


亜「またあんたが決めんの?まあ、ツインよりはやりやすそうだからいいか」


作「なあ、ハクア。前からアミってなんか俺に対して冷たくないか?」


ハ「あはは・・・」



ムラマサを納める直前、黒獣があたしの方を見たけど、その目に敵意は込められていなかった。


では何だったのか?


それは、あたしには分からなかったけど・・・。


どうしてだろう?


この子とは、また別の形で会う気がする。


何年後か、何百年後か・・・もしかしたら何千何万と掛かるかも知れないけど、どこかで。



そんな予感めいた物を感じながら、ムラマサを完全に鞘に収めると同時に黒獣の巨体がぐらりと大きく揺れて、大きな音を立てて倒れた。


程なくして、体がマナとなって世界に還っていく。


そしてそこには黒獣の牙が一本残った。





「良かったの?」


「うん。これは大事に持っておきたい」


「そっか」


この牙は黒獣を倒した証明としてギルドに提出しなければならないけど、見せるだけでも報酬を受け取ることはできる。


本来の半分以下になってしまうけど。


だから今回は、銀貨六枚だったのが、三枚になってしまった。


「ハクアこそ良かった?報酬少なくなっちゃって・・・」


「いいっていいって」


「・・・そっか。ありがと」


「ううん。でも、お姉さんとおじさんは何かあるって思ってるかも知れないね?」


ハクアの言う通り、おじさんとお姉さんは何があったのかをしつこく聞いてきた。


いや、この言い方は少し悪いけど、あの二人は十年間ずっとお世話になってるからね・・・。


あたし達の初めての行動に少し驚いているのかも知れない。


今まで提出をしなかったことなんて無かったかし、少なくともこの街で提出をしなかったのは、あたしが初めてだから、尚更に・・・。


「そうかもね」


「ねえ、どうして提出しなかったの?理由、あるんだよね?」


『うちも気になります』


『俺もだ。教えてくれねえか?』


「もちろんそのつもり。だけど、まずはお風呂入りたいから、その後でもいい?」


「あ、そうだね・・・お腹も空いたし」


『そういや、もうすぐ陽が落ちるな』


空を見てみると、ムラマサの言う通り空は暗くなっている。


後数十分で、この街にも夜の帷が降りるだろう。



宿に戻って女将さんに挨拶をして、お風呂に入りごはんを食べて部屋のベッドで並んで座る。



「あたし自身、どうして分からないんだけどね?この子とはまた会うような気がして・・・」


『この子って・・・黒獣か?』


「うん。あの子が最期にこっちを見たの、ムラマサ達も見たでしょ?」


「あ、そういえば見てたね?」


『それがなにか?』


なにか、って聞かれたらあたしにも分からないけど・・・。


「分からないけど・・・何か予感、みたいな物をね?感じたの」


「予感・・・アミ、カードを見てみて?」


「え?どうして?」


「いいから」



ハクアに言われて、カードを取り出し表示を出して裏を見てみる。


けど


「何も変わってないよ?」


どこにも変化は無かった。


スキルのレベルが上がった訳でも、新しいスキルが追加された訳でもない。


本当に何も変わってない。


「え?ホントに?」


「うん。ほら」


カードをハクアに渡して確認させる。


「・・・ホントだ」


「ね?何か気になることでもあるの?」


返してもらったカードの表示を消して、しまいながら聞くと、ハクアは新しいスキルが追加されていると思ったといった。


そのスキルの名前は『未来予知』。


文字通り、未来のことを予知するスキルでごく稀に手に入れる人がいるらしい。


でも、まだ誰も手に入れていない様で、殆ど伝説と化しているスキルだとか。


「まあ、いいんじゃない?それに、あたしはそんなスキルいらないよ」


『なんでだよ?先に起こることが分かるんだぜ?』


「だってつまらないし」


『「『え(は)?』」』


三人とも同じ反応を返してきた。



「だってさ・・・もしあたしがそのスキルを、ムラマサとフュズィに会う前に持ってたとしたら、まるで初めから出会うことが決められてたみたいじゃない?初めから決められた出会いなんて、あたしは嫌だな・・・」



折角あえてもそれが、決められていたってことなら、喜びもしないと思う。


「最初から全部知ってたらさ・・・確かに面倒なことや危険なことを避けて生きることができるけど、それはあくまでそういうことが起きるってことが分かるだけで、その先に起こることは分からないんだよ?」


「その先?」


復唱したハクアに頷きで返して、あたしの考えを話す。


「ハクアと初めて出会った時は、スキルなんて物は持って無かったし、たとえ持っていたとしてもあたしにそれを確かめる術は無かった。前にも言ったけど、あの時はハクアに食べられると思ったんだよね・・・」


『そういえば、そんなこといっとりましたなあ?』


今では良い思い出だけどね。


「あの時のあたしにとって、あれは間違いなく危険なことだった。でも、それは本当は全然危険なことじゃなくて、ハクアはあたしを助けてくれた。そこから全部始まったんだよ?目を覚ましたらハクアがいて、契約して、百年も寝ちゃって」


『未だに信じられねえよな?お前が本当は百二十六歳のババアなんてよ』


「うるさい。精神的にはまだまだ子どもなの」


実年齢でも確かに二十六歳にはなってるけど・・・。


「まあ、そこからこの世界。ウルベリアのことを教えてもらって、魔物やマナ、ギルド、精霊、魔具、契約者。色んなことを教えてもらってさ・・・ギルドに登録して、その二年後にムラマサとフュズィに出会ってさ・・・その全部を予知していた、なんてことは無いんだろうけど、いくつかの出来事は予知してた訳でしょ?」


「うん、多分」


「もしハクア達が、あたしだっとしたらそれを楽しいと思える?」


『「『ぁ』」』


「でしょ?まあ、そういうことだよ。この世界でのあたしは、危険なことから始まった。いきなり空に放り出されたんだよ?危険でしかないって・・・でも、そこでハクアに出会って、そこから全部が始まった」


女将さんとの出会いもお姉さんとの出会いもおじさんとの出会いも。


この着物に、ムラマサとフュズィ。


今日の黒獣。


「大変なことももちろんあったけどさ・・・ハクアたちがいたからね。楽しかった」


もし、あのまま落ちていて、何かの偶然が重なって無事だったとしても、訳も分からないまま終わってたと思う。


一人でこの世界を回るなんて、到底できっこなかっただろう。


「ありがとね?あの時助けてくれて」


「・・・それ、何度も聞いたよ?」


「いいじゃない?本当に感謝してるんだから」


笑いながら言うハクアに、あたしも笑いながら返す。


「ムラマサとフュズィに逢えたことも、本当に嬉しかった。最初は心配し過ぎだな、と思ったけど、それも全部優しさから来てるんだもんね?


ありがとう。いつも心配してくれて」


抱きしめて、改めてお礼を言う。


これからもムラマサはあたしの心配をするんだろう。


そして、また心配し過ぎだって思う。


でも、それが優しさだってことを、あたし達は知ってる。


「これからもよろしくね?」


『おう!任せとけ!』


頼もしいパートナー。


着物にも自我があればいいのにな・・・。


そのうち芽生えたりするのかな?



でも、今はこのままでもいいか。



「ハクア達も、これから先もよろしくね?」



「『もちろん(どす)』」



「フフ」



本当に良かった。


あの時、ハクアに出逢えて。







ハクア達が眠った後もあたしは少し起きていた。



持っているのは黒獣の牙。



それを両手で包み込んで、胸元に持ってくる。



眠気もあったから、気の所為かも知れないけど牙が少し震えた気がした。




楽しみにしてるからね?




また出逢える日を―――



 

亜「ハプニングなんか起きてないじゃん」


作「かも知れないって言ったろ?俺だって先のことなんて分からないって」


亜「はあ・・・まあ何もないならそれで良いけどね。それで、ちゃんと黒獣とは逢えるの?」


作「言ったら楽しくないだろ?お前が言ったじゃんか」


亜「・・・それもそっか。楽しみにしてるからね?」


作「・・・・心配しなくてもいいさ・・・」


亜「え?何かいった?」


作「いや」


亜「そう?まあ、いいけど。それじゃ、あたしは戻るから」


作「おう。またな?」


亜「ええ」

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