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【第三章完結済み】 半透明の守護者  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿
硝子と少女

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うちに来る?

 ガタゴト揺れて進むバスには、乗客が少ない。


 その少ない乗客たちも疲れた顔をしてノロノロとバスに乗り、ノソノソと降りていく。


 清川は金森の肩を借りてスースーと寝息を立てて眠っており、それを守護者が寂しそうに、心配そうに見つめていた。


「あの人形、見覚えがあるかもしれません」


 守護者が小さな声で言った。


「おそらく、家にあったのだと思います。原因は分かりませんが、多分、壊れて捨ててしまったのではないかと。藍は、その人形を、大切にしていました」


 ポツリ、ポツリと呟かれる言葉は、まるで独り言のようだ。


「多分、まだ、何かがあったのですね。私が生まれるきっかけとなった、本当のきっかけが。情けないことに、私はまだ何も思い出せてはいないのです。何も、何も……」


 言葉は窓の外に広がる闇に溶けていくようで、金森と赤崎は、何とも言えない様子でその告白を聞いていた。


 それきり誰も、何も話さず、バスの中は静かだった。


 やがて、赤崎の家の近くのバス停で止まる。


「じゃあ、また明日」


「ああ、またな。もしも何かあったら連絡してくれ」


 降車した赤崎は、バスが見えなくなるまで金森達の方を見つめていた。


 暗闇の中で、服のドラゴンがやけにキラキラと輝いており、それがどんどん小さくなる。


『赤崎、アンタ、職質されないように気をつけなさいね』


 おかしな光景に苦笑して、心の中でエールを送る。


 金森も自宅近くのバス停に近づくと、眠っていた清川を起こした。


 清川は寝惚けながらも、かろうじて起きたらしく「んん?」と呻き声ともつかないような声を上げた。


「清川さん、起きて。私、次のバス停で降りなくちゃ。清川さん、一人でおうちに帰れる?」


 清川はバッと顔を上げ、泣きそうな顔で金森に抱き着いた。


「え? 清川さん?」


「……くない」


 金森の胸元で清川がボソボソと話すが、聞き取ることができない。


 聞き返そうとすると、


「帰りたくない」


 と、今度は顔を上げ、明瞭な声で言った。


 金森は驚きつつも詳しく話を聞こうとするが、無情にもバスはどんどんと金森の家に近づいていく。


 焦る気持ちを深呼吸で抑えた。


「清川さん、どうしたの?」


「夢を、見たの。少し前から、たまに見てた、怖い夢。いつもは、忘れちゃうんだけど、今日は、忘れなかった」


 清川の瞳は揺れ、口の端が震えている。


「何かが、何かが家に来るの。それで、私のお友達が、壊れちゃった。どうしよう、どうしよう。わたし、わたし……」


 バスの外に広がる闇から目を背け、必死で金森に縋りついてくる。


『どうしよう、このまま放置はできないけど、そろそろ家に着いちゃう』


 人知れず背中に汗を流していると、トントンと柔らかく肩を叩かれた。


 守護者が丁寧に一度、頭を下げる。


 目は無いはずなのに、真摯な瞳に射抜かれた気がした。


『仕方がないな』


 ふぅーっと息を吐いて緊張を落ち着かせると、清川に声を掛けた。


「もしも清川さんが良ければさ、今日はうちに泊まって行かない?」


 清川は少し驚いた顔をしてから、おずおずと頷いた。

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