表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心理学は正しいのか?  作者: シンリーベクトル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/79

なぜ「知っていることをもう一度聞く」と人は煩わしくなるのか

人は一日経てば70%忘れる、と言われる。

この話の出どころは、Hermann Ebbinghaus の忘却曲線だ。


ただしこれは「意味のない単語列」を覚えさせた実験の結果で、

現実の生活記憶はもう少し粘る。


それでも確かに、私たちはかなり忘れる。


ではなぜ、


覚えている内容をもう一度聞かされると煩わしいのか。


忘れるのに、なぜ腹が立つのか。



① 情報の問題ではない


煩わしさは「内容」ではなく

処理コストと報酬の問題だ。


一度理解した情報は、

脳内で「処理済み」のタグがついている。


それをもう一度ゼロから説明されると、

•すでに圧縮された情報を再展開させられる

•ワーキングメモリを再度占有される

•新規更新が起きない


つまり、


負荷はかかるのに報酬がない。


これは認知負荷理論(John Sweller)や

予測誤差モデル(Karl Friston)で説明できる。


脳は「予測との差分」を報酬にする。

差分ゼロは、更新ゼロ。

更新ゼロは、退屈。


煩わしさの正体は、

更新されない消費行動だ。



② もう一つの問題 ― ポジション


さらに厄介なのは、

説明される構造の中にある。


誰かが丁寧に説明するとき、そこには暗黙の前提がある。


あなたはまだ十分に理解していない。


ここに軽微なランク再配置が起きる。


社会学者Erving Goffman の言う「フェイス」の問題。

人は自分の立場や能力を維持したい。


だから既知のことを再説明されると、

•能力を疑われた感覚

•教えられる側に回された違和感


がわずかに生まれる。


情報ではなく、

立場の揺れが煩わしい。



③ ではなぜ「忘れたことを聞く」のは嫌ではないのか


重要なのはここだ。


忘れている内容を聞く場合、

•更新が起こる

•予測誤差が生じる

•記憶が再構築される


報酬が発生する。


つまり


忘却は不快ではない。

更新の欠如が不快なのだ。



④ SNSで起きていること


SNSでは、

•「これ前にも言ったけど」

•「知ってるかもだけど」

•「超基本だけど」


といった前置きが増えている。


なぜか。


相手が既知か未知か分からないからだ。


だがその曖昧さが、

すでに知っている側の煩わしさを生む。


現代は情報過多だ。


煩わしさは、

情報の多さではなく、


自分の更新が起きない時間の増加

に比例している。




覚えていることをもう一度聞くのが煩わしい理由は:

1.認知資源が再消費される

2.予測誤差が生まれない

3.更新が起きない

4.立場が微妙に揺れる


煩わしさとは、

情報の重さではなく、


更新がないのに処理を求められる状況への反応である。


忘れることよりも、

更新されないことの方が、人は嫌う。


ここまで整理すると、

「効率の悪い会話」がなぜ疲れるのかも見えてくる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ