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心理学は正しいのか?  作者: シンリーベクトル


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5/22

ポジティブ思考は因果関係は逆かもしれない

ネガティブ思考の根本には、必ず原因がある


──家庭と人間関係、そして「成功経験」からの検証


ネガティブ思考は、

性格や考え方の癖として語られがちだ。


もっと前向きに考えろ。

気にしすぎだ。

考え方を変えれば楽になる。


そう言われた経験がある人は多いだろう。


だが本当に、

ネガティブ思考は「理由のない欠陥」なのだろうか。


私はむしろ、

そう考えざるを得なかった環境が、必ずどこかにあった

と考えている。



家庭環境が作るネガティブ思考


まず家庭から見てみる。


機嫌が読めない親。

怒る基準が日によって違う。

褒められるかどうかは結果次第。


こうした家庭では、

楽観的でいること自体がリスクになる。


油断した瞬間に怒られ、

期待した分だけ失望が大きい。


この環境で子どもは学習する。

• 最悪を想定していた方が傷が浅い

• 期待しなければ落胆もしない

• 自分を低く見積もっておいた方が安全


これは悲観ではない。

生き延びるための合理的な戦略だ。


ネガティブ思考は、

その家庭の中では「うまく機能していた」。



問題が解決されない家庭が作る予測


もう一つ重要なのは、

問題が解決されない家庭だ。


揉めても話し合いは起きない。

謝罪も修復もなく、時間だけが過ぎる。


こうした環境では、

「状況は良くなる」という予測を持てない。


結果、未来を考えるときの前提はこうなる。

• どうせ変わらない

• 期待しても裏切られる

• 最初から悪い方を想定しておく


ネガティブ思考は、

学習された未来予測でもある。



友好関係が作るネガティブ思考


次に、家庭外の関係を見てみる。


仲間外れにされた経験。

理由もなく距離を置かれた記憶。

「空気を読めない」と言われた過去。


これらは、

所属を失う危険として身体に刻まれる。


その結果、人はこう考えるようになる。

• 嫌われる前提で動く

• 踏み込みすぎない

• 期待しないことで自分を守る


これも弱さではない。

関係を壊さないための抑制機能だ。



「気を遣う側」に固定された人の思考


調整役、聞き役、空気を読む側。


こうした役割を長く担ってきた人ほど、

ネガティブ思考を持ちやすい。


自分を抑えたときだけ関係が保たれ、

言いたいことを言うと空気が壊れた。


その成功体験が積み重なると、


ポジティブな期待よりも、

ネガティブな予測の方が「安全」になる。



では、なぜ子どもは比較的ポジティブなのか


ここで逆の例を見てみたい。


一般に、子どもは大人よりもポジティブだ。


これは「性格が明るいから」ではない。

失敗経験がまだ少ないからだ。

• 期待しても大きく裏切られた経験が少ない

• 挑戦しても関係を失うことが少ない

• 失敗しても致命的になりにくい


つまり、


「こう動いても大丈夫だった」

「やってみてもうまくいった」


という履歴が多い。



ポジティブ思考は、意志では作れない


ここが重要な点だ。


ポジティブ思考は、

「前向きに考えよう」と決めて生まれるものではない。


むしろ逆。


成功経験や安全な経験の積み重ねが、

結果としてポジティブな予測を作る。


・期待しても壊れなかった

・行動しても拒絶されなかった

・失敗しても修復された


この履歴があるから、人は楽観できる。



検証結果


家庭と人間関係を通して見えてくるのは、一つの共通点だ。


ネガティブ思考は、

必ずどこかで「役に立っていた」。


危険を避け、

関係を守り、

自分を守るために選ばれた思考だった。


問題は、

その思考を作った環境が、今も続いているとは限らない

という点だ。



結論(暫定)


ネガティブ思考は、

壊すべき欠陥ではない。


家庭や人間関係の中で、

そう考える方が合理的だった履歴がある。


そしてポジティブ思考は、

思考を矯正して生まれるものではない。


安全な成功経験の積み重ねが、

あとから自然に作るものだ。


もし自分のネガティブ思考を責めたくなったときは、

こう問い直してみてほしい。


「これは、

どんな環境で身についた思考だったのか」


それが見えたとき、

無理に前向きにならなくても、

思考は少しずつ緩み始める。


ネガティブ思考は、

一度は、あなたを守ってくれた思考なのだから。


それでも、環境が悪くてもポジティブな人はいる


ここで、よく出てくる反論がある。


「でも、家庭や環境が大変でも

いつも前向きで明るい人、いますよね?」


確かに、いる。


ただしそれは、

環境の影響を受けていないという意味ではない。


多くの場合、その人は

どこかで「回復できる条件」を持っていた。


家庭は荒れていても、

学校や外の世界に安全な居場所があった。

安心して話せる大人が一人でもいた。

あるいは、失敗しても致命傷にならなかった経験があった。


そうした経験があると、

「世界は全部が危険ではない」

という予測を維持できる。


また別のケースでは、

ポジティブでいること自体が役割になっていた人もいる。


場を明るくする係。

空気を重くしない係。

落ち込む余裕を許されなかった立場。


外から見れば前向きに見えても、

内部では常に緊張していた、ということも少なくない。


つまり、


環境が悪くてもポジティブな人がいる

=環境は関係ない

ではない。


その人なりに、ポジティブでいられる理由や条件があった

それだけの話だ。


|「思考を変える前に、環境と経験を変える」


前章で見たように、

思考だけをポジティブにすることには明確なリスクがある。


では、ネガティブ思考から抜けるために、

人は何を変えるべきなのか。


結論から言えば、

変えるべきは思考ではなく、経験の条件だ。



思考は「結果」であって「操作対象」ではない


人の思考は、

その場その場で勝手に生まれているわけではない。

• 安全だったか

• 回復できたか

• 修復されたか

• 期待が裏切られなかったか


こうした経験の集積が、

次の予測=思考を作っている。


つまり、


ポジティブ思考を身につけたい


という願いは、

安全な成功体験を積みたいという願いに翻訳できる。



小さすぎる成功が、いちばん効く


ここで重要なのは、

成功体験は「大きい必要がない」という点だ。

• 完璧にできた

• 褒められた

• 成果が出た


よりも、

• 失敗しても致命的にならなかった

• 話したら壊れなかった

• 断っても関係が続いた


このレベルの体験の方が、

思考には強く効く。


なぜなら、

ネガティブ思考の正体は

**「最悪を避けるための予測」**だからだ。



「最悪が起きなかった」経験が予測を緩める


ネガティブ思考は、

こう問い続けている。

• もし失敗したら?

• 嫌われたら?

• 壊れたら?


この問いに対して、

理屈で「大丈夫」と答えても意味は薄い。


効くのは、


実際に最悪が起きなかったという履歴だけだ。

• 言っても大丈夫だった

• 休んでも切られなかった

• 断っても居場所が残った


この経験が溜まると、

思考は自然に更新される。



ネガティブ思考が強い人ほど「順序」を間違えやすい


ネガティブ思考を持つ人ほど、

真面目で、誠実で、努力家であることが多い。


だからこそ、

1. まず考え方を直そうとする

2. ポジティブになろうとする

3. できない自分を責める


という順序に陥りやすい。


だがこの順序は逆だ。



正しい順序はこうだ

1. 安全な範囲を作る

2. 小さな行動を試す

3. 壊れなかったことを確認する

4. それを何度か繰り返す

5. 結果として、思考が緩む


思考は最後に変わる。

狙って変えるものではない。



ポジティブ思考を「目標」にしない


ポジティブ思考を目標にすると、

どうしてもこうなる。

• ネガティブな感情が出た瞬間に失敗

• 落ち込んだ自分を否定

• さらに予測が悪化


これは、

回復を阻害する設計だ。


むしろ適切なのは、


ネガティブなままでも

それほど困らない状態を作ること


この状態に入ると、

思考は勝手に緩む。



環境が変わると、思考は勝手に変わる

• 否定されない

• 予測しなくても怒られない

• 間違えても修復される


こうした環境に一定期間いるだけで、

多くの人は気づく。


「最近、最悪を考える回数が減った」と。


これは意志の勝利ではない。

環境に適応した結果だ。



結論


思考だけをポジティブにすることは、

短期的には楽に見えて、

長期的には人を疲弊させやすい。


一方で、

• 環境

• 経験

• 回復可能性


を少しずつ変えていくと、

思考は追いかけて変わる。


ポジティブ思考はゴールではない。

安全に生きられた結果として、後からついてくるものだ。


もし今、ネガティブ思考が強いなら、

それはあなたが間違っているからではない。


そう考える方が合理的だった環境が、

どこかにあっただけだ。


思考を責めるより、

まずは「壊れなかった体験」を一つ増やす。


それが、

いちばん遠回りに見えて、

実はいちばん確実な道だ。

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