サンクコスト効果は本当にもったいないからやめられないのか?
── サンクコストと、撤退できなくなる本当の理由
前編では、
ハロー効果や確証バイアスが
「認知のミス」ではなく
判断失敗によるランク喪失を避けるための防衛として説明できる、
という話を書いた。
この前提に立つと、
サンクコスト効果の見え方も根本から変わる。
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サンクコストの説明は、どこか浅い
サンクコストは、一般にこう説明される。
すでに払ったお金や時間が惜しくて、
やめた方が合理的でも続けてしまう。
だが、この説明には決定的に足りない視点がある。
それは、
その「やめる判断」は、誰に見られているのか
という点だ。
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検証軸:1人のとき/人前のとき
ここで、極めて単純だが強力な検証を置く。
もし人が本当に
「投じたコストそのもの」に縛られているのなら、
・1人で判断するとき
・人前で判断するとき
この2つで、撤退率は大きく変わらないはずだ。
支払ったコストは同じだからだ。
だが実際には、明確な差が出る。
・上司や部下がいる
・観客がいる
・判断が記録・共有される
こうした条件が入った瞬間、
撤退は一気に難しくなる。
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撤退した瞬間に「確定」するもの
人前で撤退した瞬間、何が起きるか。
・あの判断は誤りだった
・あの選択は失敗だった
・判断者として見る目がなかった
つまり、
過去の自分の判断に「失敗」が確定する。
失われるのは金ではない。
時間でもない。
判断者としての自分の立場だ。
ここで重要なのは、
撤退が単なる終了ではないという点だ。
多くの場合、撤退は
「次に評価を取り戻すための構え」に入る合図になる。
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続けている理由は「回収」ではない
ここでサンクコストの中身は反転する。
人が期待しているのは、
・元を取ること
・努力を無駄にしないこと
ではない。
これらは理由付けに使われているだけで本音はこうだ。
・成功すれば、あの判断は正しかったことになる
・勝てば、自分サイドは間違っていなかったと言える
つまりサンクコストとは、
投じたコストに縛られている状態ではなく、
判断失敗の確定を先送りしている状態
と考えた方が、行動の実態に合っている。
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撤退できないのは「派閥が崩れるから」
判断した瞬間、人は「自分サイド」に立つ。
その後に起きているのは、
・自分サイドの正当化
・判断の延命
・負け判定の回避
だ。
撤退とは、
単なる方針転換ではない。
自分が属していた側が
間違っていたと認める行為になる。
人前では、このコストが致命的に重くなる。
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追加投資は合理的か
この構造を踏まえると、行動は一貫している。
人は、
・追加投資を行い
・判断を延命し
・「まだ終わっていない」状態を作る
これは感情の弱さではない。
ランク防衛としては、
合理的な延命策だ。
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なぜ「賢い人」ほど引き返せないのか
賢い人、経験豊富な人、立場がある人ほど、
・判断と自己価値が強く結びついている
・一度の撤退で落ちるランクが大きい
結果として、
判断能力が高いはずの人ほど
明らかな失敗から撤退できない。
これは心理的欠陥ではない。
構造上、そうなる。
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まとめ
サンクコストも、
ハロー効果も、
確証バイアスも、
本質は同じだ。
人は「損」を避けているのではない。
判断失敗による“敗北側入り”を避けている。
もし人が本当に合理的なら、
撤退はもっと軽い。
それができないのは、
人が論理ではなく
評価と立場の中で判断する生き物だからだ。
――
判断とは、選択ではない。
どちら側に立つかの宣言なのだから。




