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心理学は正しいのか?  作者: シンリーベクトル


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19/23

最近よく聞くダブルバインドってどうなん?

「ダブルバインド=選ばせる技法」への違和感


ダブルバインドは、

本やYouTubeではしばしば

「AかBを選ばせて、逃げ道を塞ぐ心理テクニック」

として紹介されている。


だが、この説明には強い違和感が残る。


なぜならそれは、

ダブルバインドの本質をほとんど説明していないからだ。


もともとダブルバインドは、

グレゴリー・ベイトソン らが提唱した概念であり、

営業術や会話テクニックではない。


本来それは、

• 矛盾したメッセージが同時に与えられ

• どちらに従っても罰が避けられず

• その矛盾自体を指摘することも許されず

• しかも関係から離脱できない


という、関係構造そのものが人を縛る状態を指していた。


「選ばせる」ことが問題なのではない。

「選べない構造に閉じ込められる」ことが問題だった。


一方で、本やYouTubeで語られる説明はどうか。


そこでは、

• 断る自由が残っている

• 関係から離脱もできる

• 矛盾を指摘することも可能


つまり、

本来のダブルバインドの成立条件をほとんど満たしていない。


それでも同じ言葉が使われ続けていることで、

「断りにくい会話」や

「気まずい選択」

までもが、安易にダブルバインドと呼ばれるようになった。


この記事では、

そうした 安直な理解には与しない。


ここで扱うのは、

「相手を操作する技法」ではなく、

• なぜ人は断れなくなるのか

• なぜ断った瞬間に、両者が同時に消耗するのか

• その背後で、どんな関係レバレッジが働いているのか


という、

日常の人間関係に埋め込まれた拘束構造だ。


ダブルバインドという言葉を使ってはいるが、

本稿の狙いは

その言葉を広めることではない。


むしろ、

「それ、本当にダブルバインドですか?」

と立ち止まるための材料を提示することにある。


ダブルバインドは「選ばせる技法」と説明されることが多い


ダブルバインドは一般に、

どちらかを選ばせて、他の選択肢を消す技法

として説明されることが多い。


この説明は、間違ってはいない。


ただ、現実のやり取りでは

それだけでは終わらない。



実際には「断れない前提」で成立している


ダブルバインドが機能する場面では、

選ばせる側より先に、

**選ぶ側が「断らない前提」**に立たされている。

• 選ばないと空気が止まる

• 断ると関係が微妙になる

• とりあえずどちらかに応じた方が安全


つまり選択は、

• 好みの表明ではなく

• ユナイト(関係)を守る行為


になっている。


この時点で、

関係にはすでにレバレッジがかかっている。




「公園に行く?それとも映画に行く?」


この質問は、

一見すると選ばせる側の操作に見える。


だが実際には、

• 選ばせる側も

• 選ぶ側も


同じレバレッジ構造の中にいる。



まずダメージを受けるのは「断った本人」


ここで、選ぶ側が断るとする。

• 「今日はどっちも行きたくない」


この瞬間、

最初にダメージを受けるのは、断った本人だ。

• 空気を止めた感覚

• 関係を壊したかもしれない不安

• 「自分が悪かったのでは?」という自己調整


これは、

レバレッジがかかったユナイトの自己損失だ。



次にダメージを受けるのは「断られた側」


一方で、断られた側にもダメージが返る。

• せっかく枠を作ったのに崩れた

• 場を前に進められなかった

• 気を使ったつもりが報われなかった


断られた側もまた、


レバレッジをかけていた分だけ、

ユナイトのダメージを受ける。


場の気まずさ、

微妙な空気の回収不能。



なぜダメージが「両側」に返るのか


それは、ダブルバインドが

• 片側の操作

ではなく

• 関係全体にかかったレバレッジ構造


だからだ。

• 選ばせる側は、関係を前に進めるために

• 選ぶ側は、断らないために


それぞれユナイトを担保に動いている。


その構造が崩れた瞬間、


レバレッジ分の損失が、

両者に同時に跳ね返る。



まとめ


ダブルバインドは、

「相手に選ばせる技法」ではある。


だが実際には、

• 選ぶ側は、断らないように気を使い

• 選ばせる側も、関係を前に進めようとしている


この状態で断りが発生すると、

• 断った本人が、まずユナイトの自己ダメージを受け

• 続いて、断られた側にもユナイトのダメージが返る


ダブルバインドとは、

断った瞬間に、両者が同時に消耗する構造だ。


誰か一人が悪いわけではない。


その場に、

レバレッジをかけすぎた関係設計

があるだけだ。


では、営業マンがこの技法を使った場合はどうなるか


ダブルバインドは

「相手に選ばせる」ことで関係を前に進める技法だ、

と説明されることが多い。


ではこれを、営業の場面に当てはめてみよう。


たとえば営業マンが、こんな言い方をしたとする。


「Aプランにしますか?

それともBプランにしますか?」


形式だけ見れば、これは典型的なダブルバインドだ。

だが多くの場合、この問いはあっさり崩れる。


なぜなら、


営業される側には

「断っても失うユナイトがほとんど無い」

からだ。


• 断っても関係は終わらない

• 空気が多少冷えても困らない

• そもそも継続的な関係を前提にしていない


この状態では、

「今日は結構です」で構造が即座に解除される。


ダブルバインドは、

ユナイトが無い相手を拘束する力を持たない。



営業マンも、結局は「ユナイト」を担保にしている


だから、実際にダブルバインドが機能している営業は、

ほぼ例外なく次の条件を満たしている。


• すでに何度か会っている

• 顔見知り・指名・紹介がある

• 信頼・好意・返報性が積み上がっている


つまり営業マンは、


「選択肢」を武器にしているのではなく、

関係にかかったレバレッジを利用しているだけだ。


表面上は

「Aにしますか?Bにしますか?」

と言っていても、


実際に拘束力を生んでいるのは、

それ以前に積み上げたユナイトである。


ダブルバインドは、

関係の代替にはならない。

関係の上にしか乗らない。



では、親友や親密な関係ではどうなるか


逆に、極めて親密な関係を考えてみよう。


親友にこう聞かれたとする。


「今度さ、旅行行くなら

温泉にする?それとも海?」


このとき、

「どっちも今は行く気しないな」

と断ったとしてもどうだろう。


• 関係が壊れる気はしない

• 空気は多少止まるが、回収可能

• 後から冗談で流せる


ここでは、断りのコストはかなり低い。


なぜなら、


ユナイトが

「一回の選択」に依存していない

からだ。


関係が太いほど、

一度の拒否で失われるユナイトは小さい。


つまり、


ユナイトが薄い相手 → ダブルバインドは効かない

ユナイトが太すぎる相手 → ダブルバインドは拘束にならない


という奇妙な挙動になる。



ダブルバインドが最も機能する領域


ダブルバインドが最も強く作用するのは、


• ユナイトはそこそこある

• だが壊したくはない

• しかしまだ安定しきっていない


この中途半端な関係だ。


• 職場の同僚

• 付き合い始め

• 上下関係があるが親密ではない関係


この領域では、


選ばせる側も

選ぶ側も


「関係を壊さないために動く」


だからこそ、

断った瞬間に両側が同時に消耗する。



結論


ダブルバインドは、

万能な操作技法ではない。


それは、


• 信頼が無ければ成立せず

• 信頼が強すぎると拘束にならず


ほどよく不安定なユナイトの上でだけ機能する。


だから、問題は

「選ばせたかどうか」ではない。


その場に、

どれだけレバレッジをかけた関係設計が存在していたか

ただそれだけだ。


ダブルバインドが苦しい場面では、

技法そのものよりも、

関係の張り方が過剰だったと考えた方が現実に近い。

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