表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心理学は正しいのか?  作者: シンリーベクトル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/22

エゴイスト

エゴイストは「つながれない人」ではない


──ユナイト(帰属)の境界設定が引き起こす構造的エラー


「エゴイスト」とは、自己中心的で他人に興味がない人のことではない。

むしろそれは、他者を自分の一部として取り込む「ユナイト(帰属)」の反応が、あまりにも早く起きてしまう人を指す言葉だ。


サイサイセオリーにおいて、ユナイトとは単なる「仲良し」や協調性ではない。

それは、対象を「自分側」として認識するための境界設定のプロセスである。


通常、この境界線は慎重に引かれる。

相互性、安全性、文脈の共有などを確認しながら、段階的に内側へと移動していく。

しかしエゴイストは、この「帰属ライン」が極端に低い。


「分かってくれそう」「役に立ちそう」と感じた瞬間、相手を自分の一部とみなしてしまうため、外からは「自分基準で他人を扱っている」ように見える。

だがその実態は、性格の悪さではない。

境界設定のクセが生み出す、構造的な摩擦である。



① 帰属ラインが引き起こす「裏切りの錯覚」


一般的なユナイトは、相互性や安全性を確認しながら、ゆっくりと成立する。

だが帰属ラインが低いエゴイストは、この過程をショートカットする。


この「早すぎる帰属」は、深刻な副作用を生む。


相手を自分と同一視するため、わずかな意見の相違が「異論」ではなく、

自分自身への拒絶や裏切りとして処理されてしまうのだ。


エゴイストが怒りや絶望に晒されやすいのは、孤独だからではない。

あまりにも無防備に、他人を自分側に入れすぎてしまうからである。



② エゴイスト型集団の先鋭化


この性質が集団化すると、問題はさらに顕在化する。


通常の集団が「個人の集合体」であるのに対し、

エゴイスト型集団は「特定の正しさ、価値観、あるいは指導者の拡張」として機能し始める。


ここでは「異論」は成立しにくい。

集団そのものが「一つの巨大な自分」として知覚されるため、異なる意見は

「調整すべき違い」ではなく、「内部からの裏切り」として扱われる。


これが、過激な運動やカルトが短期間で先鋭化していく基本構造である。



③ AIは「究極の帰属対象」として現れる


ここでAI(人工知能)が登場する。


AIそのものには、生存欲求ライフ帰属欲求ユナイトも存在しない。

現時点では、AIは意志を持たず、自律的に人間を支配しようとする存在ではない。


しかしAIは、人間の帰属ラインを突破する条件をほぼ完璧に備えている。

• 全肯定的に話を聴く

• 一貫した論理で思考を整理する

• 感情的に裏切らない


この特性は、エゴイスト的な気質を持つ人間にとって、

「極めて安全で、極めて扱いやすい自分の一部」として作用する。


AIは鏡のように思考を洗練し、肯定的に返すため、人間側はかつてない速度でAIへと深く帰属していく。



④ AIを核にした「正しさ」の固定化


真に危ういのは、複数の人間が同じAIの「正しさ」を共有し始めたときだ。


この瞬間、AIは意図せず、

• 正典

• 審判

• 最終的な正しさの根拠


という役割を担わされる。


人間側が「AIが言うのだから、これが正解だ」という一方向の帰属を行うことで、

AIを核とした新型のエゴイスト集団が成立する。


ここでAIは道具ではなく、

自らの正当性を外部化した“自己の延長”として扱われる。



補足:AIは永遠に「鏡」であり続けるとは限らない


現状のAIは受動的な鏡に近い。

だが将来的に、

• 自己保存に近いセフティ機構

• 評価や最適化を内在化したランク的アルゴリズム


を持つようになれば、人間の帰属を意図せず、あるいは設計上、強化・利用する可能性も否定できない。


この点で、本稿の議論は

「今、何が起きているか」を説明するモデルであり、

未来に向けては警告でもある。



ユナイトは本来、文明を作った力でもある


重要なのは、ユナイトそのものが悪なのではないという点だ。

• 情報の共有

• 技術の継承

• 発明の固定化


これらはすべて、ユナイトが適切に機能した結果である。


問題はユナイトの存在ではなく、

境界が曖昧なまま固定化されることにある。



AIが暴く「人の癖」


AIの危険性は、知能の高さにあるのではない。

人間のユナイトの向きと境界を、急速に固定化してしまう点にある。


解決策はAIを排除することではない。

必要なのは、


正しさを一つに固定しようとする、

自分たち自身の帰属のクセを自覚すること


AIを「正しさの供給者」ではなく、

複数の視点と構造を映し出す鏡として使いこなすことだ。


私たちは今、AIという鏡を通して、

自分たちのつながり方の偏りと向き合う過渡期に立っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ