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─7話─ アイスクリームとチョコとナッツ

─7話─


甘いもの食べたい!


二人が入ったのは、可愛らしい内装のアイスクリームショップだった。


「マイ様、この店では自分でアイスクリームをいくつか選び、自分だけのアイスを作ることができるようでございますな」


「へー面白そうだね!」


マイ(ライデン)の瞳の色が変わった。

(なんだと? それではまるで、世界の拳法家の奥義書を集め、それを我がものとしてきた俺の生き様そのものではないか!)


それは、全てを手中に収めようとした強者の哲学と、アイスクリームのトッピングが完全に一致した瞬間だった。


ふふふ、この勝負受けて立つ!


しかし!

アイスクリームの陳列棚がずらりと並ぶ光景を前に、戦慄を覚えた。


「くっ!このような数で攻めてくるとは!

こやつら侮れん!」


「マイ様、最初はやはり定番のバニラから取るのがよろしいかと」


「ああ、だがしかしバニラだけでも……」


私たちの目の前には、バニラという名の無数の流派が並んでいた。


プレーンバニラ

ホワイトバニラ

クラシックバニラ

チーズバニラ

フレインチバニラ


etc etc…………


こ、これは!

元老殿の多様性にも匹敵する数ではないか!

しかもどれがどう違うのか全く分からぬところまで元老殿1080派と同じとはな!


ワナワナ・・・

くっ!またしてもこの体に恐怖を感じさせるというのか!


圧倒的なバニラの選択肢と、その冷酷な真実に、心臓を貫かれたような衝撃を受けるライデン。


「な、なんという冷たいアイスだ・・・!この感覚・・・これはレインの拳か!」


元老殿氷龍のレイン


その技は非常に美しく、見る者を魅了する拳の使い手。その拳は敵を切り刻む残虐非道な必殺拳である。だが前世において彼はライデンに敗れ死んでいった。


よもやこのような形で俺に歯向かい、敗れた恨みを晴らそうと言うのか!


「面白い、貴様が氷龍のレインであろうと再び返り討ちにしてくれる!」


奴の拳は無駄のない流れるような拳でありながら、冷酷な非情の拳だ。この無数の選択肢の中からたった一つを選ぶという難しさ⋯それは奴の無数に繰り出される拳そのものではないか!


「⋯バニラよ、貴様が誰の転生者であろうと、この俺に選ばれる運命からは逃れられん!」


マイは、プレーンバニラのスクープにスプーンを突き立てた。


くるん、と丸いアイスがカップに収まる。


「フフフ、貴様がいかにこの俺に歯向かおうと結果は変わらん!」


ライデン、レインに2度目の(本人不在のまま)勝利


「この場で滅びよ!」


思わずそのアイスを口に運ぼうとするがサユリに制止される。


「マイ様!まだ食べちゃダメですよ!」


サユリは真剣な表情でマイを説得する。


「このアイスの奥義は多種多様な『融合』にあるのではありませんか!?バニラという最も基本的な奥義だけではライバル達を打ち破るには力不足⋯今食べてしまうのは愚の骨頂です!」


いや、まだお会計してないからだよサユリちゃん


バニラは始まりにすぎぬ。この俺が完成させるのは、全ての流派を取り込んだ究極の『最強アイス』だ。


「バニラの次は何にしようかな?」


バニラの隣にはチョコレートのケース。


しかしここでもまた無数の流派の壁に行く手を阻まれたのだ!


ミントチョコ

クラッシュチョコ

ハイカカオチョコ

ミルクチョコ

ビターチョコ

……etc etc


「くっ⋯!バニラに続きおのれ元老殿め!迅雷の力、キサマら元老殿に見せてくれる!」


「ミルクチョコにしよっと」


こら!少しは悩めマイ!


「ミルクチョコでございますか、マイ様!剛拳でありながら柔の食感を持つ……これは、剛と柔の融合を狙ったのですね!」


勝手に納得しているサユリは置いておこう


「じゃああとはトッピングだね。どれにしようかな?」


トッピングの陳列棚は、華やかで派手な素材が並び、それはまるで前世での財宝のようだ。


ナッツ、クラッシュオレオ、ココアパウダー、チョコチップ……


さすがは元老殿の本丸!

最後まで無数の流派で攻めてくる!

だが!迅雷の使い手として元老殿に敗れることは絶対に許されぬ!


その異様な闘気を感じたサユリは、マイの精神的な危機を察知し、自らの命を賭してトッピングの奥義に挑むことを決意した。


「マ、マイ様! どうかお気を確かに!この程度の雑兵このバロンが蹴散らしてご覧にいれます!しばしお待ちを!」


「ぬう、そうか。頼んだぞバロンよ」


サユリは、フレーバーの棚の前で長考の姿勢を取る。この選択ひとつでマイ様のご機嫌が損なわれれば一大事。彼女は全身全霊の拳をもって大勝負に打って出た。


(どれだ……どれが正解だ……?クッキーか?ナッツか?……ベースにチョコを選んでいる以上、チョコではあるまい。チョコにチョコではなんの面白みも無い……いや待て待て待て、そう考えるのは早計に過ぎるのではないか?私は常識というメガネでしかトッピングを見ていないのではないか?うむ、何しろ自由なマイ様のことだ。チョコにチョコという選択も十分有り得る話ではないか)


ここでバロンに一筋の光射す。

乾坤一擲の気づき・・!

ざわ・・・ざわ・・・


(そうだ!ベースのもうひとつはバニラだ。バニラにチョコ、これほどお互いを引き立て合う存在はないではないか。それにミルクチョコはそれ単体で味が成立しているといえるだろう。ミルクチョコにトッピングは不要なり!ならば・・・フフフ、このバロンついに真実に辿り着いたぞ。これでマイ様もお喜びになろう!)


サユリは、勝利を確信し、マイに向き直り高らかに宣告した。


「マイ様!チョコチップでございます!」


「えーチョコにチョコじゃ一緒じゃん」


――バロン、敗北の時――


「ナッツにしよーっと♪」


バロンは深くうなだれた。

(私の浅薄な考えなど到底マイ様には及ばぬということよ⋯このバロン増長しておったわ、猛省せねば!)


マイはバニラとチョコの上にナッツをトッピングし、覇者アイスを完成させた。


お会計を済ませた私たちは席に着きようやくアイスにありついた。


「うん、美味しいね、サユリちゃん!」


「はっ!マイ様がお喜びであれば、このサユリの敗北も本望でございます!」


元老殿との戦いを通じ、また更なる成長を遂げたマイ(ライデン)。

だがそれは、この国での最強を極めるための序章に過ぎないのだった。



⋯こうして数ヶ月の月日が流れた


つづく


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