─6話─ ぬいぐるみキャッチャーと帝王
─6話─
休日
私とサユリちゃんはゲーセンにやって来た。
目的はただひとつ!なのだが・・・
「ちいっ!バロンよ卑怯だぞ!貴様それはハメ技ではないのか!?」
格闘ゲームに興ずるマイ(=ライデン)
どうやらライデンはここに来る前にマイの記憶を検索したらしい
サユリちゃんはサユリちゃんで
「いえマイ様!これは正当な技でございます。この大パンチが当たるコンマ2秒前、キャンセルボタン+左レバーで回避可能でございます!」
ガチ解説してるし
ぬくっ⋯!
もはや闘気が残り少ないだと!?
こやつバロンのくせにやりおる!
おのれ!
こうなったら迅雷究極奥義!心虚影斬!
それは、自身の存在を消し去ることで敵の攻撃を無効化し、同時に反撃してダメージを与える究極奥義である。
迅雷2000年の歴史でこれを修得した者はジンケイとライデンのみなのだ。
・・・ぐああっ!
効かぬ効かぬのだバロンよ!
心虚影斬がまるで効かぬ!
─ You lose ─
ライデン、前世以来の敗北を喫す
おのれ、負けて生を拾うとはこのライデン最大の屈辱!
もうやーめたっと
「マ、マイ様!お待ちくださいマイ様!」
(しまった・・・接待プレイというものをすっかり忘れていた・・・このバロン最大の失態!)
何か慌てているサユリを尻目にライデンは感慨に浸っていた。
しかしさすがはアハムの世よりはるかに進んだ未来世界よ。
こやつら軟弱の集団に見えてこのような高度な技の応酬を会得しているとは、このライデンいささか見くびっていたわ
迅雷拳も格ゲーも拳ひとつでダウンというのは同じだ。
まさかこのような場所で迅雷との一致を見出すとは⋯
まさかマイはそれを知っていて今日この場を選んだというのか!?
なんというやつだ⋯!
俺は正直このマイという女を侮っていた。
運動は嫌いだし勉強は出来ないし面倒臭がりだ。
だがそのマイが迅雷の真髄をこうも的確に見抜いていたとは⋯
フフフ、やはり最強たる我が器となるだけのことはある奴だったのだ。
ん?
私はぬいぐるみが欲しかったから来ただけだけどね!
私は目的の景品が入ったクレーンゲームを見つけた。
「見て見てサユリちゃん!これ新商品だって!やろやろ!」
「ははっ!このバロンどこまでもお供いたします!」
「サユリちゃんまたバロンって言ってるーあははっ!」
自由なマイを見てバロンは心底羨ましかった。
前世でのまさに自由奔放の権化とも言えるライデン様
そして今世でのあのマイ様・・・
姿かたちは違えど根底は全く同じ種類の人物だったのだ。
「やはりあの方こそ真の救世主様。私は間違っていなかった・・・!」
バロンが永遠の忠誠を誓った瞬間であった。
「よーし取るぞー見ててねサユリちゃん」
「はっ、ですがマイ様。この機械は少々理不尽な台でございまして・・・」
サユリの言葉が終わらぬうちにプレイ開始するも
・・・ヘロン
アームは力無くぬいぐるみを取りこぼした。
「あーもう!アーム弱すぎ!信じらんない!」
「ですから先程申し上げた通り、この機械は確率機と申しまして、非常に理不尽にできておるのです」
・・・!
「非常」という単語を聞いたマイの顔色が変わった。
そう、迅雷拳は「非情」の武!
ぬいぐるみキャッチャーと同じ宿命を背負っているのだ。
それを取れずして何が迅雷の使い手か!
その時、マイ(ライデン)の闘気が急上昇したのをバルガは目撃した。
「そうか・・・この機械、この店の帝王ということか!元老殿の帝王、サウザンドの生まれ変わりに間違いあるまい!通りで手強いはずだ・・・」
「マ、マイ様そういうことでは・・・」
何かを言いかけているバロンを無視し、これも非情の宿命と受け止めた。
かつて帝王サウザンドは一度はジンケイを倒した男。
サウザンドを倒さねばアハム最強を名乗ることはできん!
「奴を倒すには機械の要を読み解き、そこへ必殺の一撃を加えるのみ!」
「迅雷心中眼!」
迅雷心中眼
それは敵の血の流れを探り要を見極める奥義である
ゲーセンの喧騒が遠ざかり、マイとライデンの脳裏には、クレーンゲーム機の配線や電流の流れが、まるで生きた血脈のように鮮やかな光を放って浮かび上がった。
見えたぞ!
キャッチャーに向けてピタリと指差す。
「サウザンド!!貴様の秘密、見切った!!」
ニヤリと笑ったマイはレバーに手をかざし
「この機械は普通のものとは配線も基盤も全て表裏逆! 」
表裏逆の機械を倒すには、逆のコマンド、つまり常識とは異なるタイミングで力を加えれば良い!
「おりゃあー!!」
レバーを動かし、ぬいぐるみの真上でアームを降下させる。そしてアームが降りる、その瞬間の0.01秒後、連打ボタンを渾身の闘気で押し込んだ!
これぞ帝王をひれ伏させる一撃!!
ドシュッ!
アームは、その瞬間に普段の何倍もの凄まじい力を発生させ、ぬいぐるみを完璧に捉えた。それはまるで機械のリミッターが一時的に解除されたかのようだった。
ガッシャン!
ぬいぐるみは獲得口へ音を立てて落下した。
「フ、貴様は既に帝王という仮面を剥がされたただの一般台!! ここまでだ!このまま永遠の眠りにつくがよい」
ついに帝王を打ち破ったマイ(=ライデン)
サユリは跪いて叫んだ。
「さすがは我が主!知恵、技、そして力、全てにおいて無敵!」
マイは嬉しそうにぬいぐるみを抱き上げた。
「やったー!見て見てサユリちゃん!可愛いでしょ!」
サユリは改めて確信した。
(やはりこの方は底知れぬ可能性を秘めている・・・!)
「サユリちゃんの分も取ってあげるね!」
もはや帝王の生まれ変わり(違う)は私たちの敵ではなかった。
色違いのぬいぐるみをゲットした私は、それをサユリちゃんに渡した。
「マイ様⋯これはサユリの一生の宝物と致します!」
マイはふふと笑いながら
「重いよサユリちゃん!(笑)」
私たちはクレーンゲームの勝利に満足し、ゲーセンを後にした。
「あー面白かった!サユリちゃん、ちょっと甘いもの食べて帰ろうか?」
「はっ、有り難きお言葉! わたくしも喜んでお供いたします!」
つづく




