─4話─ 最強武闘家と東大
─4話─
今日は進路面談
ジンケイらアハムの世の連中も気にかかるところではあったが、今の私たちにとって最大の敵は進路面談だった。
俺は最強の支配者を目指す
それは揺るぎない目標
うーん
東大なんて無茶な目標はともかく、とりあえず大学は出ておいた方が良いよね
だって将来万一支配者になった時、最終学歴が高卒じゃちょっと威厳がないもんね
そうか?
そうよ
その時、マイの呼び出しを告げる校内放送が流れた
さて
行きますか
「マイ様どうかご無事で」
サユリが頭を垂れ職員室までの道を開ける
そこをザッザッザッという足音とともにアハムの荒野を進むかの如く歩く。
やがて職員室の前
ザンッ!
それは威風堂々
崖の上に佇むライデンがサユリにははっきりと見えていた。
「さすがはライデン様・・・」
マイは静かに職員室の扉を開いた。
「失礼しまーす」
後ろでズッコケるサユリの気配を感じるが無視する。
中に入り担任の八木先生に手招きされるまま別室に入った。
いよいよ新たな戦いの始まりだ。
「早速だけど二階堂さん、進路は決まりましたか?」
実はここに至るまでまだ決めていなかったのだ。トホホ
そこでここは大博打だけどもライデンに一任することにした。
勿論、口調は私に寄せてもらう。
「相手の技を完全に模倣する迅雷同心術を使えばその程度造作もない」
なんて言うからさ。頼むよライデン!
「はい!実は将来最強になろうと考えています」
いきなりカマすね~ライデン
は?という顔をする八木先生
「サイキョウ?サイキョウとは?埼京線か何かですか?」
そうなるよね
知ってた。
「大学に行こうと思っています」
ほう、という顔をする先生
「二階堂さんは大学へ進学希望ですか。そうするとどこの学校が目標ですか?」
ふふん
「最強となる者が行く大学など決まっているではないですか。この国の最高学府・東京大学の他にありますまい」
ライデン、口調が微妙におかしいぞ
「私は東京大学に入ります」
入ります?目指すじゃなくて断定?
先生は目を白黒させた。
「うーん、二階堂さん、目標を高くするのは立派ですけどあなたの今の成績だとかなり厳しいですよ?
はっきり言わせてもらえば無理だと思います」
それなら心配は要らん
迅雷の奥義を使えば入学試験など赤子の手をひねるも同然なのだ
「はい大丈夫です。東大に入ります」
「でもね二階堂さん、東大に入ると言っても簡単じゃないですよ?共通テストでトップクラスの得点を取る必要があるし二次試験も難関ですし」
困惑する八木先生を前に、ああこいつは役に立たんな、とライデンは断じたようだ。
「ならばけっこうです。私は私のやり方で東大に入ります。それではこれで失礼します」
呆然とする先生を尻目に私は職員室を後にした。
これは⋯
だいぶやらかしてる気がするんだけど⋯
ん?何も問題は無かろう
「お帰りなさいませ!マイ様」
サユリが再び頭を垂れる。
「ああ」
教室に戻り再び自席に座る。
生徒たちは進路面談待ちでまだ大勢残っていた。
「早いお帰りでしたねマイ様。して進路はいかが決まりましたか?」
「進路は東大に決まりだ」
その声に教室内がザワっとなった。
無理もない。この学校から東大に入った卒業生など数える程度なのだ。
しかしサユリだけは歓声を上げた。
「さすがです!それでこそ最強の支配者たるマイ様!」
「えへへ、そうかなあ?」
これで私は「東京大学」という、この国における最も権威ある学府への進学が目標に設定された。
良いのか?それで!?
そして、その噂は学校全体へと急速に広がることとなった。
その日の夜
さて、いくら迅雷奥義を使うと言っても、東大合格のために覚えなければならない知識量は膨大だ。
さっそく大量の参考書を前に、迅雷の奥義を発動する。
迅雷奥義閃の呼吸!
それは並の人間が30%しか発揮できない潜在能力を100%まで引き出すことが出来る奥義なのだ
ふふふ・・・
これでらくらく覚えられるであろう
数刻の後
・・・甘かった。
元々があまり覚えられない頭脳では、30が100になったところで目に見えて覚えるのが早くなる訳ではなかった。
今までそんなに勉強してなかったからな~
今更ながら自分の努力不足を痛感する
ちいっ!
このままでは我が野望が早くも破綻するではないか!
何とか根本的な解決策を図らねばならん
さてどうしたものか⋯
サユリちゃんにMINEで相談してみよう
マイ(意識はライデン)︰
遅くにすまぬなバロンよ
実は勉強の事で相談なのだが
誰か勉強の得意な者を知らぬであろうか
サユリ︰
ライデン様こんばんは
なるほど勉強ですか
そうですね、私の知り合いで1人優秀な者がおります
その者を明日紹介しましょう
マイ︰
ありがとうサユリちゃん
楽しみにしてるね⸜(˙꒳˙)⸝
おやすみ
サユリ︰
おやすみなさいマイ様
うむ
明日バロンの知り合いとやらに会って話を聞けば何か活路が開けるであろう
悩んでも仕方あるまい
今日はもう寝よーっと
翌日
教室に入り自席に着くと、サユリが恭しく近づいてきた。
「マイ様、お待ちしておりました。件の者を連れて参りました」
「うむ」
サユリが示した先には、一人の眼鏡をかけた高身長男子が立っていた。
彼はいかにも成績優秀といった風貌で、ライデンの気にも怯えることなく、冷静な眼差しを崩さなかった。
(この冷徹な目・・・かつてどこかで会った気がする)
「彼は、陣 圭一と申します。私めの親戚ですが、学年トップの成績であり知識の奥義を極めております」
その名を聞いた瞬間、戦慄が走る。
(陣 圭一⋯?ジン ケイイチだと!?
まさかこの男!ジンケイの転生者か!?)
この陣 圭一という男、顔立ちはジンケイとは似ても似つかぬ…
見た目が前世と全然違うのは自分の方ではあるのだが。
「こんにちは圭一君、よろしくね!」
圭一は、眼鏡の位置を直しながら、微かに口角を上げて答えた。
「二階堂さん、でしたっけ?。僕は効率的な勉強法についてなら教えられますが、それを活かせるかどうかは二階堂さん次第ですよ」
そりゃそうだよね
メガネをくっと上げながら「ふん」という感じで立ち去った。
ちょっと感じ悪い男子だなー
と思ったが、学年トップに教えてもらえるんだから贅沢言えないか
放課後
図書室の一番奥の、人目の少ない大きなテーブルが私たちの拠点となった。
そのテーブルの上に大量の参考書や東大の赤本が所狭しと並べられた。
やがて圭一が静かに現れた。
彼はマイの大量の教材をちらりと見やり
「で、二階堂さん。どういうことですか?まさか、この分厚い参考書を全部丸暗記しようとでも?」
「ああ、その通りよ。貴様のような愚かなる凡人と違い、この頭脳にかかれば、知識を我が物とするなど容易いこと」
ちょっと!なんでアンタが答えてんのよ!
これじゃ完全に変な子扱いされるじゃない!
圭一は鼻で笑い
「ふ、その頭脳が、勉強が進まなくて僕に泣きついて来たんですよね?」
く!痛いところを・・・!
「東大入試は、記憶力テストではありません。論理的思考力と応用力、そして時間配分の戦略です。闇雲に知識の量を競っても意味がない。知識は、使い方を知ってこそ力になる」
こやつ知ったふうな口を!
物言いは気に入らなかったが、重要な戦力となるであろう者には変わりなかった。
「うんうん、わかった!よろしくね圭一君」
突然口調の変わるマイに戸惑いながら、
「・・・分かりました二階堂さん。僕の戦略であなたの成績を必ず上げてみせましょう。但し、実際に東大に入れるかどうかは二階堂さん次第です」
「ふ、そのような心配は要らん」
こうして知の鍛錬は、「知恵の賢者」たる圭一の論理的な指導のもと、図書室で静かに開始された。
幾ばくかの後
圭一の指導と、更に閃の呼吸の効果もありマイの勉強は驚くほどスムーズに進んだ。
「うんすごいね!よく分かるよ圭一くん!」
マイの屈託ない笑顔が圭一に向けられた。
圭一は何故か顔を横に背けメガネを上げている。
「・・・それは良かった」
圭一は指導しながら些か驚きを感じていた。
笑顔が眩しい
・・・じゃない!
なんだこの二階堂という子は
ただのおバカな子かと思っていたが、頭の回転が妙に早い
ほんの数時間で僕が数週間かけて理解した論理を完全に掴んでいる
これはひょっとすると・・・?
その時、サユリが慌ただしく図書室に飛び込んできた。
「マ、マイ様!ご報告いたします!」
マイ(ライデン)がサユリをたしなめるように言う
「慌てるな!騒々しいぞ」
我に返るサユリ
「はっ!申しわけございません⋯!」
サユリは、息を整えながら重大な情報を報告した。
「マイ様、黒いはくちょう座を象ったペンダントを持つ転校生が現れたとの事です⋯!」
「な、なにぃ!?」
つづく




