─30話─ バシリアン2号店オープン
─30話─
3月
本日堂々オープン!
喫茶バシリアン2号店
駒場東大前駅近く!
美味しいお料理と飲み物が充実した駅前のオアシスです
是非お立ち寄りください!
こんなチラシが私の元に届いた
オープンイベント
・全品3割引!
・オトクなクーポン配布!
・ボディビルダー公演!
⋯最後のはいったい⋯
都内とは聞いていたけど、まさか東大のすぐ近くに出店するとはね
間違いなくサユリちゃんの意向だろう
これで落ちたらどうしよう⋯
せっかくだから行ってみることにした。
駒場東大前
え!ほんとに駅前だし、なんか規模が大きくない?
本店の数倍はありそう
外装はこの辺の街並みに合わせたシックなものだけど、雰囲気はどことなく本店に似ている
そしてその入口の両側には⋯
コウガとハクガの等身大彫像が仁王像のように並び、異彩を放っていた。
等身大と言っても2メートルぐらいあるぞ?
変なところで攻めてる店だな。
入口のドアの前に立つ
不意に両側から気配を感じる
え!?
等身大彫像だと思っていたものは、紛れもなくご本人たちだった。
「うおっ⋯!」
私は反射的に彼らにババッと手をかざしていた。
それは『これ以上近づいたら死ぬぞ』の構えだった。
コウガとハクガに冷や汗が滲む
いや、私も冷や汗もんだ。
迅雷拳の承魂の儀を受けて以来、身体が半ば勝手に動くのだ。
ある意味まだまだ修行が足りないのだろう。
コウガ
「さすがはマイ様!一瞬で我らの間合いを封じるとは!」
ハクガ
「並の猛者であれば今ので大抵死んでおります」
うんそうなんだ⋯
ちょっとビビったけどね
というかこの2人、身動きひとつせずずっと私を待っていたのだろうか⋯?
中に入る
「いらっしゃいませー!」
え、すごい広い!
それにお客さんも沢山入ってる!
店員さんも何名もいて皆テキパキと働いている。
窓際にはたくさんの席が円周上に並び、中央にはステージがあった。
それを見た瞬間、色々察したけどね。
それにしても⋯
これは素人の仕事ではないことは一目瞭然だ。これをサユリちゃん一人でプロデュースしたの⋯?
サユリちゃんがいた
マイ「サユリちゃん、オープンおめでとう!」
サユリ「ありがとうございますマイ様!」
マイ「こっちにみんないるってことは本店は今日は休みなんだね」
サユリ「ああ、いえ、本店は本店で営業しております」
マイ「え?だって⋯」
サユリ「優秀な人材が確保できましたので、その者たちは本店にも回ってもらっているのです」
マイ「この店もそうだけど、この人手不足のご時世になんか凄くない?」
サユリ「それはですね⋯」
話を聞くと、例の銀行のヨシダさんの力添えもあって色々と人や物件の手配が上手くいったらしい。
さらにはサユリちゃんの人脈によって、スポンサー的に出資してくれる会社もあったということだ。
道理でポスター広告がさり気なく貼られたりしているわけだ
しかし素人の経営する喫茶店にスポンサーが付くとか聞いたことないぞ
どんな交友関係なんだサユリちゃん
圭一「二階堂さん」
あら、圭一君も来てたんだ
マイ「圭一君、ちょうど良かった。ちょっとご飯食べていかない?」
それを聞いていたサユリちゃんの眉がまたしてもピクリと動く
分かっておるな圭一
というような鋭い視線が圭一に刺さった。
圭一は、分かってますよ、という感じで少し肩を竦める。
この2人、いつもこうだが実は仲良しなのでは?
私と圭一君は席に案内されメニューを広げた。
そうそう、この店のキラキラメニューはどうなったのかな?
料理のジャンルがもう喫茶店レベルじゃないなこれは!
パスタやハンバーグ、ステーキに牛丼
⋯喫茶店とは。
そしてそのネーミングセンスも相変わらずだ
うーん、今日はパスタな気分だからこの『カルボくんとナーラちゃんのなかよしカルボナーラ』にしようかな
って、普通にカルボナーラで良くないか!?
ちゃんと言わないと注文通らないの?これ
「圭一君は決まった?」
「僕はこの『サイコロ転がすコロコロステーキ』にしようかと思います」
普通にサイコロステーキで通るよねきっと。
「すみません」
手を挙げると真面目そうなウエイターがやって来た。
あれ?ハクガじゃないんだ
と思ったら
あ、コウガと一緒にステージ上でスタンバってたわ
ステージの照明が光り、音楽が鳴り始めた。
今度のはよく聞く有名なノリノリのポップミュージックだ。
その曲に合わせコウガとハクガが振り付け(ポージング)を決めていく。
音楽と筋肉が完全にシンクロし躍動する。
これは⋯!
不思議な引き込まれ感!
知っている曲で見る側の心理的ハードルを下げさせ、有無を言わさぬ迫力で圧倒する!
曲が終わる頃には完全に魅入られたお客さん達。
私もその中の一人だった。
店内に拍手が響き渡る
感動で泣いてる人もいる
うーん、これは売れますわ
やがて料理が運ばれてきた
「こちらカルボくんとナーラちゃんのなかよしカルボナーラになります」
ああー
か、かわいい⋯
見た感じはまさにカルボくんとナーラちゃん!
映像を提供出来ないのが残念!
圭一君のサイコロステーキも来た。
「サイコロ転がすコロコロステーキでございます」
こっちは⋯普通のサイコロステーキだ。
たまにこういう普通のも混ざるのね。
「圭一君、受験の手応えどうだった?」
「ええ、正直言うとあまり自信はありません、何せ超難関ですからね⋯」
そうだよね
私に勉強を教えながら、しかも途中でジンケイやらジャギやら変な奴に憑依されたのに理三を受験したんだもんね
圭一君がもしダメだったら私にも責任があるよな⋯
「二階堂さん、もしダメだったとしてもそれは僕の実力不足です。二階堂さんには何も責任はありません」
え、言ってないのに顔に出てたかな⋯
「圭一君⋯2人とも受かると良いね!」
「はい」
そして私たちは合格発表の日を迎えた
次回、第一部完!




