─29話─ 覇王のパジャマパーティー
─29話─
ピンポーン
サユリ母
「二階堂さんいらっしゃい」
マイ(ライデン)
「サユリちゃんのお母さんこんにちは!これうちの母からです」
サユリ母
「あらあら、わざわざご丁寧にありがとうね?さあどうぞ」
マイ(ライデン)
「ありがとうございます。お邪魔します」
ふふん、俺のマイ同心術もかなり精度が上がったものよ
これならば何も問題なかろう
サユリ
「マイ様、お待ちしておりました!中へどうぞ」
マイ(ライデン)
「ありがとうサユリちゃん」
サユリの部屋に入る二人
うむ、もうマイモードは解除してよかろう
マイ(ライデン)
「してバロンよ、本日の議題は何だ?」
サユリ
「慌てませぬようライデン様、まずはお風呂に入りパジャマに着替えてからが本番でございます」
マイ(ライデン)
「ぬ、そうか」
サユリ
「私は既に入りました故、ライデン様はお風呂へお入り下さいませ。その間に私めは諸々セッティングを行いますので」
マイ(ライデン)
「承知した。では参るとしよう」
⋯30分ほどの後、パジャマに着替えたマイ(ライデン)がサユリの部屋に戻ってきた。
マイ(ライデン)
「うむ、風呂は大儀であったぞバロンよ」
サユリ
「それにしてもライデン様、そのパジャマ姿といい、改めて見ますとなんと可愛らしいお姿で」
マイ(ライデン)
「ぬ、この姿はやはり『カワイイ』なるものなのか?今日もここに来るまでの間に町の者共に言われたわ」
サユリ
「マイ様はこの町ではもう知らぬ者はいない有名人、それに加えその愛らしいお姿は皆の心を掴んでおるのでしょう」
マイ(ライデン)
「むう、よく分からぬが先日の承継式のせいか」
サユリ
「はい、あの式は皆感動されていたようですから」
マイ(ライデン)
「ところでこれは何の機械だ?」
机の上にはタブレットPCが置かれていた
サユリ
「はっ、ライデン様、これは本日のメイン、恋バナマシンでございます。
このマシンの様々な質問に答えますと、自身の性格や運勢、恋愛傾向、誰かとの相性などが立ちどころに判明するのです」
マイ(ライデン)
「なにい!そのような事が瞬時に判明するだと!?面白い、やってみせい!」
サユリ
「まずはライデン様のプロフィールを入力せねばなりません。機械の指示に従ってご入力ください」
マシン︰まずアナタの名前を教えてね!
ぬ!これはどうすれば良いのだ
俺は今、戸籍上は二階堂マイという名だが⋯
やむを得ぬ『マイ』でよかろう
マシン︰生年月日を教えて?
マイの生年月日など知らぬ!
何なら俺の生年月日も分からん!
ぬう⋯
早くも暗礁に乗り上げたわ
サユリ
「ライデン様、ひょっとしてマイ様の誕生日をお忘れで⋯?マイ様の誕生日は12月10日でございます。年は私と同じでございますね」
マイ(ライデン)
「流石は武将バロン!頼りになる奴よ」
サユリ
「勿体ないお言葉⋯」
よし、生年月日は入力したぞ
マシン︰血液型を選んでね
何!何ゆえそのような情報まで必要なのだ!?
この身体の血液型など知らぬが、迅雷一族の血液は毒への耐性が高い
こやつももはや迅雷一族同様であろうが、その情報は敵に悟られぬよう秘匿されるべきもの⋯!
サユリ
「ライデン様、マイ様の血液型でしたらO型でございます」
バロンめ!何故そのような極秘情報まで掴んでおるのだ!?侮れぬ奴よ!
マシン︰性別を選んでね
ぬう!肉体は女だが俺は男だ。だが精神も半分は女か⋯
となると1︰2で女ということになるのか⋯?
不本意だが嘘はつけん!
『女』を選択
マシン︰ありがとう!マイちゃん18歳だね!
マシン︰仲の良いお友達の名前を教えて?
友⋯だと?
宿敵はいるが、文脈から考えて友人の事であろう
友人か⋯この覇者に友人などおらん!
空白のままEnter
マシン︰名前をいれてね!
ぬう!誰か入れねば先に進まぬ!
待てよ⋯確か「パジャマパーティー」を検索した時に『お友達とお話する会』などと書かれておったわ⋯
ならばこれか!
『サユリ』
サユリ
「ライデン様⋯!わたくし嬉しゅうございます!」
マシン︰じゃあ最後の質問だよ!
好きな男性の名前は?
なにぃ!好きな男性の名だと⋯!?
ジンケイやトミー、奴らは別に好きという類いではない
ジャゴは論外、元老殿のシュンやサウザンドも同じよ
ならば答えはひとつしかあるまい
『バロン』
よし、これでよかろう
サユリ
「ラ、ライデン様⋯!このバロン至福の至り⋯!」
マシン︰入力ありがとう!
それじゃあなたの知りたい項目を選んでね!
知りたいものだと⋯?
この『運勢』とは即ち未来のことだと言うのか!?
そ、そのような事まで分かると言うのか!
『運勢』を選択
マシン︰いつのことが知りたい?
ぬ!【今日】や【明日】、【来年】まで選べるだと!?
そこまで詳細に未来が分かると言うのか!?
【今日】を選択
マシン︰今日は楽しいことが起こりそう!目いっぱい楽しんでね!
なにぃ!この機械どこかから我らを見ておるのか!?当たっておるではないか!
ということは⋯これはやはり真実の言ということか!
マイ(ライデン)
「バロンよ!この機械はどこで入手出来るのだ!?」
サユリ
「はっ!それは家電量販店やネットでも購入出来ますが、ライデン様のお持ちのそのスマホ、そこにアプリを落とせば同じものが使用可能でございます」
マイ(ライデン)
「なんと⋯!このような未来が分かる機械を入れぬ手はないではないか!マイの奴に教えたら驚くぞ⋯!」
早速占いアプリを手当り次第自分のスマホにインストールするライデン
よし、これはこれとして次へ進むとしよう
【明日】の運勢も見ねばなるまい⋯!
マシン︰明日はちょっと誰かに怒られちゃうかも⋯
でもそれはあなたのためだから落ち込まないで!
ぬ!
明日は少し大人しくしていた方が良さそうだな
しかしここまで正確に未来を予言するとは⋯
もはや死告星など不要ではないか!
死告星
北極星の脇に輝く小さな星を見たものは、その年のうちに命が尽きるとされる不吉の星だ
マイ(ラオウ)
「む?この【本当の貴方】とは何だ!?」
サユリ
「は、それは自分でも気づかぬ本当の自分自身を知ることが出来る項目でございます」
マイ(ラオウ)
「なにぃ!このような機械に真の俺の姿が分かるというのか!?」
マシン︰マイちゃん、あなたは一見、周囲から明るくて社交的だと思われがちですが、実は一人で静かに過ごす時間や、自分自身を深く見つめ直す時間をとても大切にしているよね?それはとても素敵な事だよ
マイ(ラオウ)
「なっ⋯!あ、有りえぬ!こやつ俺のことをこうまで見抜いておるとは!」
こうして、彼ら(彼女ら?)は全てを見透かすその機械に大いに翻弄されていった。
サユリ
「ライデン様、意中の人との相性を知りたくはありませぬか⋯?」
マイ(ライデン)
「なんと!そのような事まで分かってしまうとは恐るべき機械よ!」
しかし意中の者、か⋯
ローズはこの現世におるか分からぬし、昔マイに言われた通り、いつまでも過去を引きずるのも覇者らしからぬことよ⋯
くっ⋯!これではマイの奴に『なんとつまらぬ人生』と言った俺自身がつまらぬ人間になってしまうではないか
そのような姿をバロンに悟らせるわけにはゆかぬ⋯!
ならばこうだ!
マシン︰サユリちゃんとの相性だね!OKまかせて!
サユリ
「なんと!ライデン様が私を意中の人と⋯!?」
サユリの目が潤んでいた
マシン︰マイちゃん!サユリちゃんとの相性は100パーセントだよ!悩みごとの相談にも乗ってくれるし一緒に遊んでも楽しいよね!これからも仲良くしてね!
うむ、これならばバロンにも悟られぬであろう
サユリは溢れる涙を拭っていた
こうして深夜に至るまで恋バナマシンはその真価を存分に発揮したのであった。
翌朝⋯⋯
うーん、よく寝た!
言われた通り2日も寝るとスッキリだね
たまにはライデンもマトモなこと言うじゃん
あれ⋯?
見覚えはあるけど見慣れない部屋の風景?
そして身体にかかる誰かの腕と寝息⋯?
ゆっくりそちらを見る
⋯えええ!!
なんでサユリちゃんと一緒に寝てるの!?
どういうこと!?
待て待て慌てるな私
ひとつずつ確認していこう
ここはサユリちゃんの部屋だ
なぜ!
サユリちゃんのベッドで寝ている私
なぜ!
私に抱きついて寝ているサユリちゃん
なぜ!
なんも分からーん!!
私のスマホ⋯
なにこれ!
【誰でもかんたん!恋占い】
【驚くほど当たる未来の私】
【彼と彼女の運勢】
怪しいアプリで埋めつくされてるんですけど!?
MINE履歴は⋯
パジャマパーティー!?
何勝手にそんなのやってんのよ!
ダメだ
とてもツッコミが追いつかん
「サユリちゃんサユリちゃん」
「マイ様⋯」
寝ぼけたサユリはさらに抱きついてくる
いったい何をどうしたらこんな状況になるのよライデン!!
(ぬう!怒られた!なんということだ⋯あの未来の言はやはり正真正銘の真実なり!しかし今意識を出すのは何かマズい気がする⋯しばし寝たフリをしよう)
もう!起きてるんでしょ!?
タヌキ寝入りしてんじゃないわよ!
くっ⋯!
流石は迅雷拳正統伝承者、よく見破った!
見破ったじゃなーい!
家でおとなしくしてるって話だったよね!?
ん、しかしだなバロンが話をしたいと⋯
もう!人のせいにするなんて覇王のする事じゃないわよ!
ぬっ⋯!!
そ、それは⋯
サユリ
「マイ様⋯でありますか⋯?おはようございます」
マイ
「あ、ああサユリちゃん、おはよ⋯」
サユリ
「マイ様、昨夜はマイ様不在の元、ライデン様と親交を深めておりました。何卒ご容赦くださいませ」
マイ
「⋯ん?うん、いや、良いんだけどね⋯」
(うむ、良いところで起きてくれたかバロンよ、助かったぞ)
サユリ
「今度は是非マイ様と2人きりでパジャマパーティーが出来ればと存じております」
マイ
「うん、そうだね、そうしよう」
(流石は頼れる武将バロンよ、人心掌握に優れておるわ)
こうして私の知らないところで始まったパジャマパーティーは、私のスマホに占いアプリの大量インストールという被害を出しながら終了したのだった。
つづく




