─27話─ 承魂の儀
─27話─
「続きましてマイ様、ご挨拶のほどよろしくお願いいたします」
もうこうなったら覚悟を決めるのみ!
「本日はご多用の中、私たちの継承式にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
私はつい先日ジンケイさんから依頼を受け、迅雷拳伝承者となることができました。
今、伝承者となった喜びと責任を実感しております。そして、このような素晴らしい日を迎えられたのは、みなさまのおかげと感謝しております。
本日は、日ごろお世話になっているみなさまに楽しい時間を過ごしていただければ幸いです。
どうかこれからも私共を見守って頂けますようよろしくお願い申し上げます」
我ながらよくもまあスラスラと口八丁なセリフが飛び出すものだ
先日見た芸能人の結婚式と、迅雷同心術のおかげだね
「それでは!元伝承者と新伝承者による承魂の儀に参ります」
ついに来た⋯!
「伝承者の門出を祝う、お二人にとって初めての共同作業、承魂の儀です。こちらは、元伝承者より新伝承者へ要を撃って頂きます!」
めっちゃ誤解を生みそうな言い回しじゃん
お客さん、要って理解してるの?
「この要には、伝承者としての甘く幸せな未来が込められています。 お二人の輝かしい未来に、大きな拍手をお願いします!」
会場に響き渡る拍手の波
その中、私の背中に周るジンケイ
私の開いた首筋に向け狙いを定める
「皆さまシャッターチャンスでございます!どうぞ前の方へお越しください!」
いや来なくていいですけど!
「おおおぉっ!」
ドンドンドンッ!
私の首から背中にかけての三つの要が瞬時に撃たれた
背中に微かな痛みを感じる
⋯⋯ん?
もう終わった?
私はゆっくり立ち上がった
身体に異変は⋯
特にないようだ
血も⋯出てないね
⋯あっ
しかしその時、私の脳内には迅雷拳2000年の記憶が奔流となって流れ込んできた
これか⋯
これが承魂⋯
「おめでとうございまーす!」
その声が私を現実に引き戻した
BGMの音量が上がり、カメラのフラッシュが一斉に光る
やがて拍手が鳴り止み、一瞬の静寂が訪れる
「今ここに、第70代迅雷拳伝承者の正式なご降誕でございます!」
再び沸き起こる拍手の渦
私、迅雷拳伝承者なのね⋯
それが今実感させられた
私は深々と頭を垂れた
拍手がいつまでも続く
少しの後
「続きまして、余興の時間に入らせて頂きます!」
あるんだ、余興
暗殺拳とはいったい⋯
「まずはコウガとハクガによるボディビルの演技です!」
お酒で真っ赤になったコウガとハクガが壇上に現れ、陽気なラテン音楽が流れた
その音楽に合わせボディビルを披露する二人
参列者は皆笑顔で見ている
「キレてるよー!」の歓声が飛ぶ
うん
私はいま何を見せられているのだろう
この後もサユリちゃんのピアノ独奏や
町内の皆さんの太鼓演舞などが披露された
やがて
「皆さま、本日はご参列頂き誠にありがとうございました。この後も引き続き美味しい料理とお飲み物でお時間の許します限りごゆっくりとご歓談ください」
ふう
ようやく私の役目は終わったようだ
一応ドレスっぽい格好してきて良かった
これがジャンパーにジーンズだったら完全に浮いてたところだ
もう!ジンケイもそういうのちゃんと教えといてよね
と思ってジンケイの方を見ると
あ、メガネしてる⋯
何か呆然として周りを見回している
今何してたか覚えてないのね
ちょっとかわいそう
これでうぬも迅雷の正統伝承者となったわけだ
俺の見込んだ通りであったな
ライデンはさ、正統伝承者になりたかった?
ふん、俺の覇道は最強となること!
迅雷拳はそのための手段に過ぎぬ
正統であるかどうかは俺には無関係だ
⋯とはいえ貴様が正統伝承者となった今、喜びが無いと言っては嘘になるがな
ふふ、そっか
ありがとう
私はサユリちゃんに話しかけた
「サユリちゃん、圭一君がジンケイだって知ってたんだね」
「そうなんですよマイ様!まさか圭一にジンケイ殿が転生しているとは知らず、私めがそれを知ったのはつい先日でございまして⋯」
あの日圭一君を粛清に行った時かな⋯
「それにしても祝電凄かったね?」
「ああ、あれは私が都内の2号店を探してる時に偶然知り合いまして、そこから親交させて頂いてる者共になります」
ええ?者共扱いなの? 大丈夫?
「あの者共にマイ様の事を話しましたら、是非参列したいと申しておったのですが、この店は町内の方で一杯ですのでお断りしたのです」
あのねサユリちゃん
普通の人は偶然だろうとたまたまだろうと、そんな人達と知り合ったり親交を深めたりしないんだよ?
もう何言ってるのか分からんわこの子
「二階堂さん」
圭一君が話しかけてきた
「今日この会があるのは何となく分かっていたのですが詳細は全く知らず、今日も僕、というかジンケイはいったい何をしたのでしょう⋯」
「ふふ、私と将来を誓いあってたよ!」
「⋯えっ!?」
サユリちゃんの眉がピクリと動くのが見えた
「圭一よ、貴様の中にジンケイ殿がおるとはいえ、お前とマイ様では釣り合いが取れぬことを自覚せい!」
「いや、え?何がどう⋯?」
かわいそうな圭一君
ちょっとだけ同情するよ
こうしてバシリアンの宴は私たちが帰った後も夜中まで続いたのであった
つづく




