─23話─ 共通テストと牛丼
─23話─
ライデンがいない
昨夜私はライデンにお願いをしていたのだ。
共通テストは私一人で受けたいと。
「そうか」
ライデンはそれだけ言って了承してくれた。
試験日程が終わるまでは何が起こってもライデンは現れない。
全ての結果と責任は私次第だ。
私は一人試験会場へ向かった。
1人ってこんなにも心細いものなのか
改めてライデンの存在の大きさを実感させられる。
でもここにいる受験生は皆1人なのだ。
私がここまで来れたのは間違いなくライデンのお陰だ。
そのライデンに消えてもらった本音を言うと、私だけ相棒がいるのは何か「ズル」をしているようで嫌だったからだ。
今更かも知れないが私一人でどこまでやれるのか試したかった。
勝手でゴメンね
試験が終わったらライデンの好きな牛丼食べに行こうね
そしてついに試験が始まった
開始と同時に周りのペンが走る音だけが聞こえてくる
少しの焦り
問題を見るまで
「カッコつけ過ぎたかなー」
って不安だった
1問目の解答にマルを付ける。
これでようやく緊張が解れてくる
そしていざ問題を解いていくうちに、ちょっとした「ゾーン」に入っていくような感覚になるのが分かった
この1年は無駄じゃなかった
そう思える手応えがあった
今の私にBGMが付くとしたら映画「ロッキーのテーマ」だろうか
なんてね
こうして2日間の試験日程は無事に終了した
自宅に帰り、私は自己採点の結果を眺めていた
文系志望だからそこまでシビアでは無いにしろやはり気になるものは仕方がない
んー流石に満点とは行かないな
おい、この程度の問題で満点も取れずにおめおめ帰ってきたのか!
ちょっとさー
久しぶりに戻ってきて開口一番がそれ?
もう信じらんない!
ふん、お前に全権を与えたのが間違いよ!
この俺がいればこのような愚問全て粉砕していたわ!
あーそうですか!
じゃあ本試験はライデン一人で受けてよね!
ふ、ふん!その程度造作もないわ
今ちょっと焦ったでしょ
くっ!このライデンに限りそのような事があるものか!
ふふ、とにかく試験は無事に終わったよ
⋯むう、
まあ今回は褒めておいてやるわ
こうして共通テストも終わり、ライデンも戻り、私たちは2次試験までの間、束の間の日常へ戻ったのだった
圭一君はどうだったのだろう
彼は理三なんて超難関志望だからかなりシビアなはずだ
あまりこちらから聞くのもちょっと気が引けるよね
MINE着信︰権 次郎
噂をすればなんとやら、だ
今日はどっちから来たのかな?
圭一(?)︰こんばんは\(^▽^)/!
あぁージンケイだ
圭一君疲れて眠っちゃったかな
ジンケイ︰今日は試験日なので僕が大活躍してきました( ⑉>ᴗ<⑉)ヘヘッ
えええ!こいつマジで!?
マイ︰ちょっとちょっと!ジンケイさんが解答したの!?
ジンケイ︰はい(^o^)/
はいじゃなーい!
何してんのよ圭一君⋯
ジンケイ︰あ、圭一の意識が起きたがってますね
ちょっとメガネかけますね(-⊡ω⊡)ゞクイッ
圭一︰ジンケイがまたすみません
マイ︰試験受けたのジンケイさんって本当?
圭一︰ああ、試験の途中で目が疲れてうっかりメガネを外してしまったんです
マイ︰えええーーそれって⋯
圭一︰そしたらジンケイが何問か勝手に答えてしまっていたんです
あの阿呆は一度お灸を据えてやらねばならんな
圭一︰幸いすぐにメガネかけてくれたんで直せましたけどね
マイ︰そっかー安心したよ
圭一︰しかしそのおかげで先に解答した部分の間違いにも気づけたんで、結果的には助かりました
マイ︰ジンケイが役に立ったのね
圭一︰ええ、自己採点結果は悪くないと思います
マイ︰私も自己採点はまあまあかなって思ってるよ
圭一︰そうですか。それは良かった
二次試験も頑張りましょう
マイ︰ありがとう!おやすみなさい
⋯ジンケイに試験などやらせたら受かるものも受からんからな
圭一君、爆弾抱えてるようなもんだね
くわばらくわばら
よし!明日はお休みだしお昼は牛丼食べに行こうか
ん?付き合ってやっても構わんぞ
─翌日─
バシリアンの前を通った
何気なく置き看板に目をやると目立つ手書き文字で
『貴方が愛したふわふわ牛丼モーたまらん』新発売!
牛丼⋯?
ここ喫茶店だよね?
ふむ
奴ら、この俺の言いつけを守ったようだな
え!いつの間にそんな事言ったの!?
記憶にないんだけど!
ん?考え事でもしていたのではないか?
経営会議の時にさらっと言っておいたのだがな
ドサクサ紛れに何開発させてんのよ!
みんな2号店出店で忙しいってのに!
選択肢は多い方が良かろう
俺は困らんがな
あーもうこのおっさんは⋯
道理でバシリアンの様子を見たがったわけだ
仕方ない
寄っていきますか
コウガ
「いらっしゃいませマイ様」
マイ
「あれ?コウガとハクガだけ?サユリちゃんは?」
ハクガ
「姐さんなら2号店の物件の下見に行っております。我らはこの本店の留守を預かる身」
預かる身って⋯
バイトの子に大事な下見に行かせて自分ら店番?ここのオーナー誰?
マイ
「新メニュー頼んでも良いかな?」
ハクガ
「ッ⋯もちろんでございます」
今舌打ちしなかった?ハクガ⋯
マイ
「じゃあ新メニューの牛丼お願いします」
ハクガ
「ふ、復唱します⋯貴方ががたあ愛したふわふわ牛丼モォーたまらん、おひとつでよろしいでしょうか?」
言えてないよハクガ
マイ
「はい、愛してます!」
ハクガは真っ赤になって厨房に入っていった。ちょっとからかい過ぎたかな?
しばらくして
コウガ
「貴方が愛したふわふわ牛丼モーたまらん上がったよ!」
居酒屋みたいになってきたな
やがてハクガが料理を持ってやって来た
ハクガ
「おまちどうさまです。こちら⋯ああ貴方が愛ししたふわっふわぎゅ牛丼モーたまらんでございます。ごゆっくりどうぞ⋯」
涙を滲ませるハクガ⋯
誰が考えたのこの名前
牛の形をした丼がまた可愛い
こんなのどこに売ってるんだろう
フタを外す
暖かい湯気とともに黄金色に輝く牛丼が現れた
「いただきます!」
箸でひとつまみ口に運ぶ
!
こ、この味は⋯
牛肉と玉ねぎにタレの甘辛さ加減が絶妙!
そしてご飯に合うように調整されたふわふわ食感!
こりゃ確かにモーたまらん!
ライデンの意識を前面に出してあげる
「ぬう⋯この牛丼やりおる!ハクガよ、もう1杯頼むぞ!」
ちょっとちょっと!
食べてるの私の身体なんだからほどほどにしといてよね
しかしバシリアンの新メニュー
これはアリかも⋯
つづく




