─14話─ ジャゴとジンケイのものまねと
─14話─
P奪還から1ヶ月ほど経った
紫電号が壊れたせいで私は毎日歩いて学校まで通っている。
学校から家まで約3キロ
歩くと40分ほどかかる
ちょっと遠い
紫電号は意外と重症だったようで、すぐには直せそうもなく、買い換えた方が早いという話で進んでいる。
ごめんね紫電、これが日本の資本主義経済活動というものなのよ。
でもその距離を歩いているおかげで色々と発見があった。
3キロの道は意外と普通に歩ける。
バスもあるにはあるが本数が少なくてタイミングが合わせづらいから使わない。
雨の日はさすがにしんどいから使う時もあるけどね。
そういえば、ライデンにバスの乗り方教えとかないとな
何故か随分バスに憤慨していたし。
脳内ではいつもそのライデンと会話しているから道中も寂しくない。
そこだけ聞くとヤバい人みたいだ。
そうそう
模試が終わってその結果が昨日届いたのだ。結果はCMのあと(いつだ)
学校に着きいつものように席に座ると、何やら隣のクラスが騒がしい。
ここまで話し声が聞こえてくる。
「俺が誰か言ってみろ!!」
「し、知りません!」
「貴様ァ、この額の三つのアザを見ても分からんのかぁ?」
「タ、タンジロー様!?」
「違うわ馬鹿者!ジンケイ様だぁー!!」
なんの三文芝居だ
これは「迅雷の覇者」コミックで言うところのジャゴのくだりだろう。
ジャゴはジンケイの名を騙り悪行三昧を繰り返していた男だ。その理由が「ジンケイの名を貶めるため」
しょうもな!
「俺が誰か言ってみろ」というのは、ジャゴがジンケイになりすまし、無関係の人間にこれはジンケイの悪事だと分からせるためのものだ。
ひゃあ姑息~
そんなだから迅雷兄弟にカウントされないんだよアナタは
そして隣は圭一のクラスではない。
ああ、ニセモノだから本物のいるクラスには現れないという設定に寄せてるのかな?知らんけど。
迅雷の身内に反応したのか、ライデンの意識が表に出てくる
むう
ジャゴだと?
あの男が隣のクラスに現れたというのか?
ならば迅雷の長兄として挨拶ぐらいしてやらねばなるまい
やめなよ、友達同士で遊んでるだけじゃないの?迅雷の拳ごっことかで。
ふん、高校生にもなってする遊びとは思えぬがな
それはそう
ちょっと気になってきた。
どんな阿呆がやってるのか、をね。
隣のクラスを覗いてみる。
昔の友達もいるからその子の所へ行く体でね。
「俺が誰か言ってみろー!」
あーまだやってるわ
どんな奴かと思って見てみると、
あれ?
意外と高身長の好青年?
って圭一本人やないかーい!
よそのクラスで何をしておるのだ奴は。
メガネは⋯
外してる⋯
ということはあのジャゴのモノマネをしているのは、ジンケイのモノマネしているジャゴをジンケイがモノマネしているということか
意味わからん
「あ、二階堂さん、あなたの彼氏なんとかしてくださいよ!」
いや、彼氏じゃないし
先日のゲドー事件以来、私らは付き合ってる認定されているらしい。
知らんがな
「朝からずっとあの調子で、僕らが『ジンケイ』って言うまで離してくれないんです」
なんだかなー
面白いから放置したくなってきた。
とはいえ勉強を教えて貰っている立場上、何とかした方が良さそうだ
でもあの三文芝居に付き合うの?
やだなあ
ライデンの長兄モードでやってみる?
ふん、まあ良かろう
マイはジンケイの前に仁王立ちした。
「ジャゴよ!貴様ジンケイになりすましての悪行三昧!この迅雷の長兄ライデンが許さぬぞ!」
え、ちょい待って待って!
これじゃ私もトンデモ野郎の仲間入りじゃん!
ぬ、今更遅いわ
「うぬのような出来損ないの弟は迅雷一族の恥だ!出てゆけい!」
あー、こりゃもうマイちゃんの可憐なイメージ終わった⋯
明日からフード被って登校しよう
心配するなマイよ
俺が転生してからお前にそのようなイメージは既に無いわ
ジンケイがこちらに振り向く
「なんだと⋯?この小娘が」
口が悪くなったなジンケイめ
軽く闘気を出して威圧しておくか
ふん⋯!
いつものマイを通しての闘気ではなく、ライデンの純粋な闘気が放出される
ドゥン!
その途端ジンケイの顔色がみるみる変わった。
「ひぃっ、そ、その闘気⋯!まさか、あ、兄者!?」
ぬっ!こやつのその物言い⋯
ジャゴ本人か!
「貴様!ジンケイのなりすましでは飽き足らずジンケイ本人に憑依したか!」
えーマジでー!?
圭一君、何人の人格受け入れてんのよ
憑依されやすい体質?
「あ、兄者こそ何だその姿は!それでもアハム最強と呼ばれた迅雷の武闘家か!?」
ジャゴは泣きそうな顔で叫んでいる。
「貴様!この姿を愚弄するとは万死に値する!」
なんかありがとうライデン
とにかくこのままだと私のイメージも受験勉強も両方危機だし、ついでに圭一君のイメージも地の底に失墜してしまう
何とかしなきゃ
あ!そうかメガネ!
どこだろう!?
⋯見当たらない
手近にあるのは誰のか分からない安物のサングラス
多分百均のものだろう
なんで教室にこんなものが?
まあいいや
一か八かかけさせてみる
「ほら圭一君!新しいメガネよ!それー!」
「ぬうわ⋯!」
ジャゴは苦しみ出し、やがて大人しくなった。さすがに元気100倍にはならなかったか。
「あれ?なんか暗い・・・」
圭一の意識が戻ったようだ
メガネなら何でも良いんかーい
暗いのはグラサンのせいだろうけど面白いから知らんぷりしておく
「ほら早く自分のクラスに戻ってちゃんとメガネかけなさいよ!」
圭一の背中を押し教室から出た。
「もう圭一君!今何してたか覚えてる?」
圭一はややバツが悪いという感じで
「・・・今のはジャゴですよね・・・ジンケイの時と違って少し覚えてます」
ほほう、覚えてるんだ
それはそれで恥ずかしいねー
巻き添えを食らった私もだけどね!
「ジャゴなんか押し出しちゃいなよ!ジャマでしょ?あんなの」
「僕の中のジンケイが押し出してくれれば良いんですが、ジャゴの意識が出てる時はどうも上手く出てこれないらしくて⋯」
なんだかめんどくさいなー
分かった
もう乗りかかった船だ。
圭一の中のジャゴ殲滅作戦開始!
「名付けて、OJO(追い出し)よ!」
ダサいネーミングなのは自覚している。
でもほら頭文字を見るとさ、
OJO
メガネかけてる圭一君みたいで可愛いよね
「作戦はこうよ」
私はOJOの段取りを圭一君に説明する。
まず他に被害や目撃者が出ないよう、夕方に体育館に行く。今日のその時間帯なら誰も使ってないはずだしね。
次に圭一君のメガネを外す
これでジャゴが出て来たならライデンの覇気で抹殺する
もしジンケイが出てきたらメガネをかけさせて封印
そしてまたメガネを外す
ジャゴが出てきたら抹殺
もしジンケイだったらメガネを⋯
「あの二階堂さん、論理的に作戦立ててるように言ってますけど、結局行き当たりばったりの運頼みって事ですよね」
「ありゃ?やっぱ気づいた?てへ」
とにかく実行あるのみ!
夕方─
私たちはいそいそと体育館へやって来た。
よしよし誰もいないな?
そういえばいつもうるさいバロン(サユリ)がおらぬな?
あれ?ホントだね
今日はサユリちゃん見てないね
お休みだったのかな?
とりあえず今はOJOに集中しよう。
じゃあ、始めよう⋯!
「圭一君!メガネOFF!!」
「分かりました」
圭一がメガネを外す
「貴様⋯!俺が誰か言ってみろ!」
よし!あっさりジャゴが出た!
あとはライデンの覇気で滅殺するのみ!
「うむ、ジャゴよ!このまま天に還るがよい!」
ライデンは闘気を集中しジャゴへ向けた
ただならぬ闘気を向けられたジャゴは即座に自分の行く末を恐怖した。
せっかく現世に来たのにまた消されてはたまらん!
「⋯兄者待ってくれ!俺は重要な情報を持っているのだ!」
「命乞いかジャゴよ?無駄だ!」
あ、待って待って
聞きたい聞きたい!
うおおいマイよ!
そうやって一気に殺らなかったばかりに、事態がどんどん悪化していく話がいくらでもあるのを忘れたのか!?
あの攻略本(迅雷の覇者コミック)にも悪者どもの失敗談が載っていたではないか!
うん、それはそうなんだけどライデンならジャゴくらいいつでも簡単に消滅させられるでしょ?
む、むう、それはそうだが⋯
少しだけだからな!
ライデンの自尊心くすぐり作戦は上手くいったようだ。
私はジャゴに問いかけた
「何?情報って」
「あ、ああ、元老殿のシュンの事だが⋯」
そう言いかけた途端、ジャゴの様子がおかしくなった。
「ぐ、ぐがが⋯!!」
「ジャゴ!その話聞かせてもらおうか!」
ん?
ジャゴが一人で会話してる⋯?
いや違うな
奴をよく見てみい
ジンケイとジャゴの意識が両方出てきておるわ
「⋯ふ、ふふ、現れたなジンケイ、貴様に良い話をしてやろう。貴様がライバルと呼ぶ元老殿のシュンの事だ」
あ、これはまた長くなるヤツだ
マイは直感した。
つづく




