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─13話─ メガネとサユリちゃんの部屋

─13話─


図書室はもはや前世の荒野と化していた。

置かれたテーブルは二人の闘気によりヒビ割れ、書物は宙を舞った。


「行くぞジンケイ!!」

「おおおっ!!」


お互いの闘気が衝突する


ついに二大巨龍相撃つ!!


「二度は敗北せぬぞ!ジンケイ!!」

「永遠に滅びよライデン!!」


「ていうか図書室で何やってんの!」


その声は一瞬で二人の闘気を消し去った。


ぬ、ぬ!マ、マイ!?


「全くもうライデン!私がいない間に何してるのかと思ったら図書室めちゃくちゃにして!」


マイはつかつかとジンケイに近づき

「ジンケイさんも!助けてくれたのは感謝してるけど、勝手に私のライデンを滅ぼさないでよね!」


「・・・!」

ジンケイが一瞬たじろいだ。

その隙を見逃さず、マイはメガネをジンケイにかけたさせた。


ジンケイの顔からみるみる険が取れ、優しげな圭一の表情へ戻っていった。


「やっぱりね、圭一君」


マイは圭一を指さし、某探偵のように言い放った。

「メガネを掛けると圭一君、外すとジンケイ、真実はいつもひとつ!て事よね?」


圭一は困惑の表情を浮かべていた

「え?あれ?今僕はジンケイだった⋯?」


「そう、そのメガネが入れ替わりのスイッチみたいね。使いようによってはなかなか便利アイテムになりそうね」


何!マイはいつの間にそのような重要な事に気づいていたのか⋯!

やはりこやつ侮れぬ!


さて、と

このめちゃくちゃな状況どうしたものか。

司書さんが怯えながらこっちを見ている。

これじゃ仕方ないよね~


幸い司書さんの他には誰もいない。

マイは気配を消し、そっと司書さんの背後に回った。


ピシッ!


マイの親指が司書さんの頭を突いた。

「暗律というかなめを突いたわ、これでここの記憶は無くなるわね」


いや待てマイ!

貴様いつの間に迅雷の技を使いこなしておるのだ!

俺は今なにも手助けしておらぬぞ!?


ふふ、私は迅雷の技の中でも同心術だけを覚えたの。

これさえ覚えればあとは誰かの技を見ただけで自分も使えるようになるもんね!

ちょっと苦労したけどさ。


おかげで私の意識がなかなか外に出られなくて焦ったわよ。ライデンが一時的に消えたのもこれが原因だったみたいね。


待てい!

「ちょっと苦労した」ではないわ!


これまでは俺が発動させていたから同心術も使えていたであろう。

だが!

それを単独で発動させるとなると話は全く別だ。


他の技はともかく、同心術だけは覚えようと思って覚えられるような性質のものでは無い。

天性の素質、それは天賦の才と言っても過言ではない。それに加えて技の本質を見抜く胆力が必要だ。ある意味においては️究極奥義心虚影斬よりも難易度は高いのだ。


俺やあのジンケイでさえ同心術の習得には何年も要した。それをたった数ヶ月で覚えただと・・・?

こやついったい⋯!?


「さ、早く早く」

私たちは図書室からコソコソと逃げ出した。

司書さんが目覚めたらその惨状に悲鳴を上げるかも知れない。ちょっと良心が痛む。


これで保健室に続いて図書室もしばらく使えなくなった。

ダメじゃん!自らどんどん行ける場所減らしてるじゃん!


「遅れましたマイ様!」

サユリちゃんが遅れて到着した。

今の見てたら大騒ぎしてたろうな

危ない危ない


学校での勉強場所を失った私は、さてどうしたものかと思案した。


「仕方ないな~、ウチはちょっと遠いから圭一君ちに行って勉強しても良い?」

マイの提案に圭一は「え?」と驚いた表情を見せた。


「え⋯?え、ウチですか?」

圭一は突然のことに動揺していた。


「あ、急に嫌だよね、ごめんごめん」


全然そんなことはないです!

と言いかけたところへサユリが割って入ってきた。

「マイ様!であればわたくしめの家ではどうでしょうか。そんなに遠くありませんし」

「そうだね、そうしよっか」


圭一は「くっ!余計な事言いやがって」と口から出そうなのをグッと飲み込んだ。


サユリの家はここから5分も歩かない所にある。


ふ、バロンの自宅か

あのライデン軍武将だった奴の事だ、トゲトゲしい漆黒の部屋であろう


いやいや、今はサユリちゃんなんだからもっと女子っぽいんじゃない?


しかし奴の風貌を見ればバロンのイメージとさして変わらんではないか


えーじゃあ兜とか刀とか置いてあるのかなあ


私の中でこんなやり取りが行われるのも久しぶりな気がする

「うん、やっぱりこうでないと」


「え?何がですか?マイ様」


「ふふ、なんでもない」


ほどなくして私たちはサユリちゃんの家に到着した。

「ささ、どうぞお上がりください」


玄関に入ると母親らしき人が現れた。


「ただいまー」

サユリちゃん、めっちゃ普通じゃん

てっきり「今参ったぞ」とか言うのかと思った


「あら、皆さんいらっしゃい。さあ上がって」


優しそうな人物ではないか

娘がこんなヤンキーで苦労しないのであろうか


もう!人んちのそんな余計な心配しないの!


「こちらでございますマイ様」


扉に小さな板がかかった部屋に通される

【SAYURI ROOM】


扉を開ける。

そこは⋯


「うわー可愛いー!」


それは一面ピンク色のファンシーな部屋。

ベッドの脇には可愛いぬいぐるみがいくつも置かれ、机の上にも小物が置かれている。いかにも女子な部屋だった。


「貴様!鎧や刀はどこにあるのだ!」


私の口をついてライデンの本音が漏れる。

うん、そう言いたくなる気持ちは分からなくもない。

サユリを昔から知る圭一でさえ何か呆然としている。


「はっ!何か不都合がございますでしょうか」

サユリちゃんは何を言われているのか分からないという顔だ。


サユリは勉強のために大きめのテーブルを用意してくれた。

「では適当にお座りになって、早速始めると致しましょう」


私たちが座ると、圭一も居心地悪そうに座る。


「では⋯先日の続きから」

圭一君の講義が始まり、私はそれを一生懸命吸収した。


これも迅雷同心術の効果だろうか。

応用問題も昔より難なく解けるようになっていた。


勉強に熱中するとついつい圭一の方に身体が寄って行くのだが、いつもの広い図書室ではないため圭一は逃げることができなかった。

「に、二階堂さん近いですよ!」


うん?

見ると圭一は真っ赤な顔を必死に隠していた。


その様子を黙って見ていたサユリ

「圭一よ、貴様そんな調子でマイ様の勉強をちゃんと教えられるのか!?

ええい、貴様はこちらに来い!

マイ様の隣には私が座る!」


体よくサユリがマイの隣に座り、圭一はテーブルの向かい側に座らされた。なんだかションボリしているように見える。


トントン

扉をノックする音


「皆さんお茶でもいかが?」

サユリの母親がコーヒーやお菓子を持って来てくれた。


「ありがとうお母さん」

サユリちゃん、家じゃいい子なんだねー


「ちょっと疲れたから休憩しよっか」


「そうですね。お菓子もありますしそう致しましょう」


私たちはお菓子を囲んで談笑した。


そんな中、圭一が話しかけてきた。

「すみません二階堂さん、すっかり忘れていたのですが、今日保健の富田先生から二階堂さんへ届け物があるからと、預かって来たものがあるんです」


⋯嫌な予感がする


圭一はカバンの中から小さな紙袋を取り出し、私に手渡した。

「僕は中身を知らないんですが、富田先生が『洗濯しておいたと二階堂さんに伝えて渡しておいて』との事でした」


これは⋯間違いなく、Pだ⋯

ああ、富田先生⋯

私のものだと知っていたのですね

今後どういう顔で富田先生に会えば良いのか⋯よよよ


「ほ、他に何か言ってた⋯?」


「富田先生、何やら全身が凄く痛いとか言ってましたけど、大丈夫ですかね?」


まあ、肉体ごと魂を消滅させてたからね~

むしろ痛い程度で済んで良かったよ


んん?、この包みはいったい何だ?

開けて見せい!


ライデン!いや無理!


「マイ様、それは一体なんでしょうか?見せて頂けませんか?」


サユリちゃんまで!

だから無理だって!


ミッションPはここにようやく完了した。

ほろ苦い結末だった。


「そういえば」

サユリが口を開く

「マイ様、昨日ジャージはなぜ必要なだったのでしょうか」


うむ、俺もそれが知りたかったのだ。

そのせいで今日は散々な目に遭ったからな。


やっぱライデンもか

というかどんな目に遭ったのだろう

私の体で変なトラブルに巻き込まれるのはやめてよね!


そもそも貴様がジャージなぞ借りるからだろうが!


あーもう分かった分かった


「実は制服がちょっとほつれちゃって、それでね?」

我ながらナイスなウソを思いついたものだ。


「なるほどそうでしたか。それは大変でございましたね」

サユリちゃんは納得したようだ。


貴様、嘘をついておるな?


さすがライデン鋭い!

って、自分の頭の中だもんね

嘘はすぐバレるか


はい

パンツ無かったからでーす!


あ!そういえば!

今日なんでジャージなの!?

手提げに濡れた制服入ってるし!


ん?、昼休みに雨に降られてだな⋯


せめてどっか目立たないところに干しておいてよ!臭くなっちゃうでしょ!


ああ、そう言えば紫電は家で休んでおるわ


え!紫電号どうしたの!?

ちょっと帰りどうすんのよ!

バス本数少ないのに!


仕方あるまい

紫電のチェーンが外れてだな⋯


こうして私の脳内会議はサユリちゃんに声をかけられるまで延々と続けられた。



つづく

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