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─1話─ 最強武闘家、現世へ

俺はアハムの武闘家として、この腕ひとつでモンスターと対峙していた。


俺の剛拳があればドラゴン級のモンスターですら一撃で葬ることが出来るのだ。


「アハム最強」


俺はその称号を欲しいままにしていた。

しかしその日⋯


俺は慢心から背後の気配に気づくのが一瞬遅れてしまった。


ザシュッ!!


人の終わりなど呆気ないものだ。

いかに鍛え抜かれた肉体といえど、モンスターの鋭い爪を不意に受けてはひとたまりもなかったのだ


俺の武闘家としての人生はここに幕を閉じ⋯


⋯なかった!


ん⋯?

ゆっくり目を開ける。

俺は⋯助かったのか⋯?


辺りを見回す。

そこには見慣れぬ品々と色彩の部屋。

枕元には謎の黒い小箱が妖しく点滅している。

窓から差し込む光は穏やかだった。


これが極楽浄土というものか⋯?

しかし自らの呼吸や体温がそれを強烈に否定した。


「ここは⋯アハムの世ではない⋯?」


俺はベッドから身を起こし起き上がった。


身体が軽いな⋯


何気なく視線を自分の手に落とした。


なっ!

なんだこの小さな手は!


それは手だけではなかった。

手も足も小さく、どちらも折れそうなほど細く滑らかだった。


俺の鋼の肉体が⋯!

砕けてしまったというのか⋯!?


全身を映す程の大きさの鏡が目に入る。

俺はまさかと思いながら恐る恐る鏡に近づく。


そこに映った姿は───


─────────────────


私は二階堂マイ、17歳の高校生。


こう言っちゃなんだけど朝には弱い。

目覚ましが鳴ってまともに起きられた試しがない。

学校がちょっと遠いからママチャリで通ってるのが疲労を貯める原因のひとつなんだよね。決してナマケモノだからではないのだ。


そう、その日の朝までは。


今日は珍しく目覚ましが鳴る前に目覚めた。

昨夜はわりと遅くまでピンスタやヘックスを見ていたのに、これはなかなかの快挙だ。


あれ?

意識はハッキリしているのに何故か身体の自由が効かない⋯?

何となく勝手に動いてる感覚?


んなバカな

ちょっと疲れが行くとこまで行ってるんだと思った。こりゃマズイなー


⋯ん?足が勝手に鏡に向かう?


鏡の前に立つ

うん、今日も可愛い


自分で言っててキモイとは思うが、それが正直な感想なのだ。仕方ないよね


(どういう事だ!?)

なんか変な叫び声が頭の中で響く


何?何がどした?

この姿はなんなのだ!ありえん!


うわ、私自分の姿に疑問持っちゃったよ

やっぱ可愛すぎるとそうなるんだね

馬鹿か貴様は!この状況を説明しろ!


いや待って待って

頭の中がヤバい!

これって相当重症だよね?

学校行ってる場合じゃないじゃん!

どうしよう!今日テストあるのに!


くっ!話がまるで通じん!

奴の声は聞こえているのに俺の声は届いていないのか!?

そもそもこれはいったいどういう状況なのだ!


いや待て⋯

最強の武闘家たるもの、この程度のことで己を見失ってどうするか


よし

冷静に事態を考えるのだ


まず鏡を見た時の俺の姿だが⋯

明らかに矮小な娘の肉体であった

身長は150センチぐらいか?

そこから考えられるのは⋯


全く分からん!


とにかく神は俺をこのような小さな体に閉じ込めたという事だ。

そしてこの体にはどうやら別の意識が存在する。


その意識は俺をまだ認識出来ていないようだ。

ええい!面倒くさい!

貴様!俺の声が聞こえているな!?

返事せんか!!


ぎゃああ!!

怖い!怖いよ!!

何この頭の中!

話しかけて来るんですけど!!


あれか?

「アナタの脳に直接話しかけてイマス」

的なやつ!?

うわーどうしよう

もう今日学校行けないかも(p_q*)シクシク


いい加減にしろ!

話がいつまで経っても進まんではないか!


良いか小娘!

俺の名はライデン!

アハム最強の武闘家だ!

お前はいったい何者だ!


ええええ!

自分に問い詰められてる!?

というかライデンとかアハムってなに!?


ちょっと病院調べておこう⋯

でもこれ答えないとずっと声が響きそうな予感しかないよー


おかしい事とは思いつつ応えてみる


わたしはマイ!あなたはだあれ?

(いかん、昨夜見たザブリ映画のモノマネになっちゃった)


だからそれは先程言ったであろうが!

ちゃんと聞いておれ!


あーもううっさい!

なんなんこの頭の中のおっさん!


おのれ!

あくまでこの俺を愚弄する気か!

こうなったら我の力で理解させるしかあるまい!


眼前の物質を全て無に還せ!

我散爆掌!!


それは体内の気を集中させ、爆発的な奔流を敵へ叩きつける強力無比な技である!


そよっ


わなわなわな・・・

な、なんだこのそよ風は!

手で扇いだのと変わらん!

これならウチワの方がマシではないか!

くくっ!


⋯なに言ってるか分からないけど、とにかく今はこんな頭の中のおっさんの事より学校に行くのが先決なのだ!


私は制服に着替え、朝ごはんもそこそこにママチャリで学校へ向かう。

その間ずっと頭の中の声は消えなかった。


ヤバいよヤバいよ

私の中のデガワが叫び続けるのだった


こら貴様!ここはいったいどこだ!どこへ向かっている!?

お前は何なのだ!


この頭の中の変な声のせいよ!

いい加減大人しくして欲しいんだけど!


おかしい⋯!

ママチャリを漕ぐ足が重い

何か自分の足が思い通りに動かない感じ


もう!このままじゃ遅れるんだけど!


⋯こいつ何を慌てているのだ?

急いでいると言うわりには遅すぎんか?

この小さきママチャリの力が全く発揮できておらん


まさか⋯

俺も漕がねばならんのか?

ふざけるな!そのような雑事に構ってはおれん!


もうなんでもいいから早く漕ぎなさいよ!

この足!言うこと聞いて!


やかましい奴め!

⋯ならば我が迅雷拳の真髄、少し見せてくれよう

ゆくぞ!


ライデンの意識がペダルに込められた。


グンッ!

自転車が急加速する


「え!?いや、ちょっと!」


自転車はみるみる加速し、道を走る原チャリを軽く追い越す。


待って待って!

こんなにスピード出したら!スカートがっ!!


ええい!貴様が急げというから手助けしてやったものを今度はなんだ!


いや!だからスカートが!


何を言っているのか分からん!

とにかく急げば良いのだろう!


「ぎぁぁぁぁー!!」


着いた!もう着いた!

止まれこの足!!


ズザアァァー!!

ママチャリは真横を向いて止まった


あっぶな!

何のアクション映画だ!


とにかく何とか時間とスカートは無事に守りきり学校へ着いた。


⋯ここはどこだ?

何故このような場所へ急いだというのだ?


あーまだ聞こえるわ⋯

後で保健室の先生に診てもらおう

私は足取り重く教室へ向かった。


こうして私の新たな生活が始まったのだった。

頭の中に変なおっさんを抱えて。



つづく

某所での別筆の某二次創作をオリジナル版として構成しました。

最終話までプロット済みです。

最後までお楽しみいただければ幸いです。

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