第0064話 霧の街
翌朝、霧の街の石畳は濡れており、歩くたびに靴底がかすかに音を立てる。
街の裏通りは薄暗く、木組みの家々が重なり合う影を落としていた。
主人公は慎重に足を進める。
ライネルは低くつぶやくように声を出す。
「この路地か……慎重に進むぞ」
シルヴィアは軽口を交えつつも、目は鋭く周囲を見渡す。
「ふふ、ここなら誰にも気づかれないわね。情報網も使えるし」
マリーベルは苛立ちを炎に変え、指先で小さな火の玉を弾く。
「早く進めないと、時間がもったいない」
アリアは後方で静かに祈る。
小さな掌からこぼれる光は、仲間を守るための祈りの証だった。
蟻の国の小人たちが、壁の隙間から紙片を運んでくる。
そこには、消えた夫の足取り、最後に現れた場所の記録、そして不可解な数字や記号が書かれていた。
主人公はそれを読み解きながら、赤ん坊の逆説的予知の存在を改めて意識する。
路地の奥に広がる小さな広場。
霧の合間から差し込む光が、湿った石畳を淡く照らす。
その中心に、赤ん坊の瞳が深く光った。
未来を逆に見通すかのように、静かに、しかし確実に主人公たちを見据えている。
「望む答えは、まだ遠い」
赤ん坊の瞳が告げる言葉に、主人公は息を飲む。
その意味を探りつつ、街の隠された影に神経を集中させる。
その時、影が動いた。
ドルグ――ライバル探偵の姿が、霧の中から現れる。
「随分と忙しそうだね、君たち」
その声には冷ややかな余裕と、わずかに楽しむような響きが混ざっていた。
路地の奥で、不可解な事件が連鎖する。
足音だけが残り、姿は消える。
住人のちょっとした言い間違いが、本音や秘密を思わぬ形で明かす。
蟻の国の小人たちが仕掛けた細工によって、壁や影に新たな手掛かりが浮かび上がる。
日暮れが近づき、四葉亭に戻る主人公たち。
暖炉の炎が揺れる中、四人は互いの顔を見合わせた。
「ここからが本番だ」
主人公の声は低く、だが確かな決意がこもっていた。
その夜、四葉亭の窓からは、濃い霧に覆われた街並みがぼんやりと見える。
街灯に照らされる水たまりに、赤ん坊の逆説的瞳のような光が反射して揺れた。
仲間たちはそれぞれの元素を感じながら、次の行動を心に描く。
ライネルは土の重みを胸に、次に踏み込む場所の安全を計算する。
シルヴィアは風の感覚で、街全体の情報をそっと手繰る。
マリーベルは火の苛立ちを心に留め、力の出しどころを探る。
アリアは水の静けさを胸に、仲間の心を鎮める。
霧の街は夜の静寂に包まれ、街角の影はゆっくりと伸びる。
しかし、主人公たちの心には、次第に事件の輪郭が浮かび上がりつつあった。




