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第0056話 幻か現実か
遺跡の影から、昨夜の暗殺者たちが姿を現した。
「……まだ生きていたか」
ライネルが低く呟き、剣を構える。
敵は無言で剣を振り上げ、鉄槌を構えたが、その動きは不可解で読めない。
まるで影そのものが生きているかのように、不規則に攻撃が襲いかかる。
マリーベルは炎の魔力を炸裂させ、赤い閃光が暗闇を切り裂いた。
石壁に衝撃が走り、敵の足元を揺らす。
シルヴィアは風のように敵の背後を取り、短剣を振るう。
しかし刃は虚空を切っただけ――虎か石か。
影は幻のように消え、無害に見える石の塊のようでもある。
アリアは女を抱き、癒やしの光で傷を防ぐ。
「気を抜かないで……!」
敵の影は静かに、しかし確実に次の攻撃の機会を窺っていた。
女は心の奥で、過去の断片と火の雨の恐怖を同時に感じながらも、仲間と共に立ち向かう決意を固める。
――虎か石か。幻か現実か。
戦いの序章は、すでに始まっていた。




