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第0047話 面倒な真実

その夜。

シルヴィアはひとり、街の歓楽街へ姿を消していた。

普段のちゃらんぽらんな笑顔は消え、盗賊としての鋭い眼差しだけを宿して。


「火の雨……儀式……そして記憶を失った女。全部つながってる気がするね」

彼は人混みを縫い、裏路地にある酒場へ入った。そこは盗賊や情報屋が集う場――彼にとっては庭のようなものだ。


卓に座ると、酒を啜るふりをして低く囁いた。

「今夜は特別な情報が欲しい。……“生贄”って噂を聞いたんだが?」


沈黙ののち、隣の席から笑い声が洩れた。

痩せた男が肩をすくめ、唇の端を吊り上げる。

「噂どころじゃねえ。ギルドの裏で動いてる連中が、女を集めてる。祭壇に捧げる“器”を探してるらしい」


シルヴィアの眉がわずかに動く。

「器、ね……。火の雨を呼ぶための」


「そうさ。選ばれた女は――記憶を消される。抵抗も、疑問も持たせないためにな」


その言葉を聞いた瞬間、シルヴィアは心臓を冷たい手で掴まれたような感覚を覚えた。

四葉亭に現れたあの女――。

記憶を失っていた理由が、これで説明できてしまう。


「……なるほど。いい線だ」

表情を崩さぬまま席を立ち、彼は心の中で吐き捨てた。

(やれやれ、面倒な真実に触れちまった……こいつは仲間にどう伝えるか、頭が痛いね)

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