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第0044話 女の正体
卓を囲む四人の視線が、女とギルド使者に集まった。
外套の女は怯えに震え、使者は焦燥を隠そうともせず、二人の存在が酒場の空気を重くしていた。
「……つまり」
シルヴィアが椅子をくるりと回し、気怠げに足を組む。
「この子は自分が誰だかわからない、で。あんたは街ごと燃えるかもしれん、と。どっちも放っとけねえ話だな」
「軽口を叩くな、シルヴィア」
ライネルの声は低く鋭い。
「女が追われていると言った。火の雨の儀式と関係している可能性がある」
「関係、か……」
マリーベルが腕を組み、炎のような瞳をぎらつかせた。
「もしも本当に儀式の生贄だってんなら、放っておけないね。あたしは燃える街なんざ見たくない」
アリアは女の手を握ったまま、小さく微笑んだ。
「……あなたが誰であっても。わたしたちは探す。記憶も、真実も」
その言葉に、女の瞳から涙がこぼれた。
「……ありがとう……ありがとう……」
使者は大きく息を吐いた。
「受けてくれるのだな。報酬は――ギルドの財庫から十分に支払おう。ただし時間はない。敵はすでに動いている」
ライネルは手帳を閉じ、深い溜め息をついた。
「……依頼は引き受ける。俺たちが追うのは――“火の雨”の真相と、この女の正体だ」
四人の合意をもって、事件は正式に動き出す。
四葉亭の炉の火が、ひときわ強く燃え上がったように見えた。




