第0040話 老将軍の息子
牢の扉は鉄の重みを帯び、沈黙の中で軋む音を響かせた。
薄暗い光が差し込み、そこに囚われた者の影を長く伸ばしている。
将軍の息子――若き姿は、衰弱と絶望に彩られていた。
顔色は青白く、呼吸は弱々しく、かすれた声で囁く。
「……俺は無実だ……」
声が震え、唇が微かに動く。
「だが……もう、生きる気力はない……。どうか……終わらせてくれ……」
ライネルは剣を握り、足元で地面に力を込める。
「俺が……介錯するのか……?」
胸の奥に、義務と責任の重さが圧し掛かる。
マリーベルは炎を指先に集め、淡く揺らす。
「せめて苦しまぬよう……浄めてやれる」
火の光が、牢の暗闇をわずかに赤く染める。
アリアは膝をつき、祈りの歌を口ずさむ。
「眠りの中で……穏やかに逝けますように……」
水の精霊が彼を包み込み、冷たい空気を柔らかく変える。
シルヴィアは静かに墓標を握り、目を閉じる。
「……こんな墓、盗んででも守ってやるよ」
その声には、無骨な決意と深い優しさが滲んでいた。
将軍の息子の息は、ゆっくりと、静かに絶えた。
牢の中に、深い静寂が訪れる。
それは恐怖でも悲しみでもなく、救いの静けさだった。
老将軍が駆けつけ、膝をつき深く頭を垂れる。
「お前たちは……息子を救ったのだ。真実を明らかにし、安らぎを与えてくれた」
四元素の探偵団は、互いに顔を見合わせ、言葉を交わさずとも理解し合った。
重い使命を果たした者だけが知る、安堵と哀しみの余韻。




