第0038話 記録庫
霧に包まれた墓地の奥、古びた記録庫に四人は足を踏み入れた。
壁一面に並ぶ羊皮紙、埃にまみれた書物、長年閉ざされてきた真実の痕跡。
墓守が低く告げる。
「ここに、逆さの足跡の秘密がある」
ライネルが慎重に扉を押し開くと、古文書の束が床に散らばっていた。
「……これか」
彼は1枚の記録を拾い上げる。
文字は古代の象形文字に近く、図とともに描かれた儀式の詳細が記されていた。
逆さの足跡――ただの偽造ではない。
死者を呼び戻し、強制的に歩かせることで、歴史に罪の痕跡を残す儀式。
「……死者を操っているのか」
アリアは息をのむ。
「命を奪うのではなく、死者を道具にしてまで罪を作り上げる……恐ろしい」
シルヴィアが紙片を手に取り、風で埃を払う。
「これって……教団の陰謀そのものじゃない。国や歴史を操ろうとしてる」
マリーベルは火の炎を手のひらに灯し、文字を浮かび上がらせる。
「魔力の痕跡が残ってる……これが足跡の秘密なら、魔法だけじゃない。死の力そのものが使われてるわ」
ライネルは剣を握り締め、重苦しく呟く。
「我々はただの探偵じゃない……死そのものを操る敵に立ち向かわねばならん」
四人の心に、重い覚悟が宿る。
正義と義務、恐怖と責任。
誰もが心の奥底で、次に迫る戦いの厳しさを理解していた。
突然、記録庫の奥から低い唸りが響く。
影が壁から浮かび上がり、黒い気配が蠢く。
「……来る!」
四人は瞬時に陣形を取り、元素の力を集中させる。
火が燃え、土が固まり、風が渦巻き、水が空気を浸す。
教団の影――死者を操る力が、初めて実体を持ち、四元素の探偵団に迫った。
戦いの序章が、静寂を破り始めたのであった。




