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第0037話 妖艶な女

夜の四葉亭は、いつになく静かだった。

窓の外には霧が立ち込め、月明かりはかすかに店内に差し込む。


アリアは夢の中で歩いていた。

石畳の路地、神殿の冷たい床、霧に包まれた墓地――

現実の断片が、まるで幻のように重なり合う。


そのとき、気配が変わった。

背筋に冷たいものが走り、振り返ると――


妖艶な女が立っていた。

肌は月光に溶けるように白く、瞳は深い森の奥を覗くように澄んでいた。

人ならぬ気配――幽鬼とも妖精ともつかない存在。


「真実と慈悲は、両立せぬもの」

その声は夢の中で囁くように響き、アリアの胸を締め付ける。

「お前たちは、どちらを選ぶ?」


アリアは言葉を返せず、ただ立ちすくむ。

目覚めると、手にはわずかな熱を帯びた紙片が握られていた。


翌朝、震える手で仲間に告げる。

「……夢に現れた女が、教えてくれたの。助言してくれているの」


ライネルは眉をひそめ、剣を軽く握る。

「夢か現実か……しかし、何かしらの手がかりであることは間違いない」


マリーベルは火の指を空に揺らし、疑念を見せる。

「夢の話なんて……しかし、放ってはおけないかもしれない」


シルヴィアは肩をすくめ、軽口を叩きながらも、目は真剣だった。

「ふうん……幽霊と友達になったのね、アリア」


アリアは小さくうなずき、紙片を皆に見せた。

そこには、神殿の奥に潜む秘密を示唆する、古い文字の断片が残されていた。


「これは……調べるしかない」

ライネルが決意を固め、四人の足元に静かな緊張が広がる。


夜明け前の霧の街に、再び冒険の匂いが漂った。

秘密と敵――未知の恐怖が、四元素の探偵団を待ち構えていた。

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