第0035話 傭兵探偵
傭兵探偵の冷たい眼差しが四人を貫く。
「国のために、若造を見捨てるべきだ。無駄な抵抗は許されん」
マリーベルは炎を揺らし、声を震わせる。
「無駄だなんて……そんな考え方、許せるわけない!」
炎の光が彼女の怒りを赤く映し、夜霧に揺れた。
ライネルは剣を握り、地に突く。
「確かに国の秩序は大事だ。しかし、無実の者を死なせるわけにはいかん」
アリアはうつむき、祈りの手を組む。
「……命の価値は、国の都合だけで測れるものじゃない」
水の精霊がそっと周囲を包むように揺れる。
シルヴィアは軽口を交わすが、その瞳は冷静に周囲を測る。
「私は……金にならなきゃ動かないって言ったけどさ……
でも、こういう死の香りは、笑えないね」
風が彼女のマントを揺らし、霧の中で長く伸びる影と絡み合う。
傭兵探偵は片目を細め、静かに唸る。
「……甘い。国の秩序と大義の前には、個人の感情など無力だ」
その言葉に、四人の心に小さな亀裂が入る。
理想と現実、正義と義務、仲間の思いと国の要求。
「どちらを選ぶかで、未来も変わる」
ライネルの心の中で、重く響く。
アリアは瞳を潤ませ、小さく呟く。
「……もし、間違った方を選んだら……」
その言葉に、四人の間に張り詰めた空気がさらに深まった。
霧の墓地に、理想と現実の落差が、音もなく広がる。
四人はそれぞれ、自分の信念と仲間の意見を天秤にかけ、決断の時を待っていた。




