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第0034話 墓地

霧の立ち込める墓地の道を、四人はゆっくりと進む。

足元の石畳には、まだ夜の湿気が残り、靴底を濡らした。

神殿の冷気とは違う、死者の記憶が染み込んだ空気が漂っていた。


「……あの足跡、信じられないわ」

アリアは手袋越しに指を握りしめる。

「死者を動かしてまで罪を捏造するなんて……胸が痛む」


マリーベルは肩にマントを羽織りながら、眉を寄せる。

「魔法で足跡を偽装する程度ならまだ理解できる。だけど、死者を呼び戻すなんて……規模が大きすぎる」


ライネルは腕を組み、天を仰ぐ。

「国や秩序のために犠牲になる者がいるのなら、俺たちはそれを止めねばならん」

剣の柄に手をかけたまま、沈黙が長く続く。


シルヴィアは軽口を叩くが、瞳の奥には緊張が潜む。

「金になる話じゃなきゃ、私は絶対無理って感じね」

口調は冗談めいても、足元の霧に目を凝らすその姿勢は真剣そのものだった。


墓守から渡された古文書を広げ、四人は過去の事件を確認する。

逆さ歩きの足跡により、冤罪で処刑された者の記録。

その顔ぶれは、すべて同じパターンで歴史に残されていた。

「……歴史そのものが歪められている」

アリアの声が小さく震える。


そのとき、霧の向こうから金属の軋む音がした。

影が一つ、墓地の端から現れる。

鋼の甲冑を纏い、片目を覆う傷跡――

異国の傭兵探偵が、冷たい眼差しで四人を観察していた。


「おや、ここで出会うとは」

声は低く、測るような口調で、四人を試すように響いた。


マリーベルが炎を揺らし、構える。

「……誰?」


傭兵は一歩前に出る。

「俺も同じ事件を追っている。だが忠告しよう。あの若造は救う価値がない。処刑させろ。国のためにな」


ライネルは唇を噛み、剣の柄に力を込める。

義務と正義の間に裂け目が走る。


アリアは小さく震え、声を落とす。

「……でも、処刑されれば国は安定するのかもしれない」


シルヴィアは肩をすくめ、笑いながら言った。

「金になれば、どっちでもいいけどね」


夜霧の墓地に、理想と現実の落差が、静かに影を落としていた。

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