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第0033話 逆さ歩き

床の石が低く振動し、冷気が四人の背筋を貫いた。

足跡の周囲から、黒い影が形を成し、ひとつ、またひとつと実体化する。

死者――いや、死者の意思を宿したものたちが、逆さ歩きのまま迫り来る。


「来るわよ!」

マリーベルの炎が壁面を照らし、影を一瞬で焼き払う。

火の杯の力が、彼女の手の中で震えた。


ライネルは剣を構え、前方に立つ。

「俺が足止めする! 後ろは任せた!」

土の力を床に注ぎ、影の歩行を阻む結界を作る。


シルヴィアは影の隙間を縫うように駆け、風の刃を操る。

「動きを封じるわよ――!」

影が軋むように揺れ、風の力に抵抗する。


アリアは祈りを捧げ、周囲に水の精霊を呼ぶ。

「苦しむ魂よ、安らぎを……!」

水の精霊が影に触れると、冷たい霧となって立ち昇り、死者の意思を和らげる。


影たちが散らされる。

しかし足跡は消えず、逆さのまま、彼らを導くかのように奥へと続く。


ライネルは足跡を凝視し、低く唸る。

「……ただの影じゃない。儀式の中心へ誘っている」

古文書の記録が脳裏をよぎる――逆さの足跡は死者を操り、罪の痕跡を歴史に残すために作られたもの。


「教団……歴史そのものを歪めているのね」

アリアの瞳が潤む。


「仕方ない……次の一手は、あそこだ」

マリーベルが指さす先には、祭壇のような場所。

影の気配がより濃く、足跡はそこに向かってまっすぐ伸びている。


四人は互いに目を合わせ、無言の決意を交わす。

「――進むぞ」

ライネルの声に、四元素の力が応える。

火が燃え、土が固まり、風が吹き、そして水が静かに流れる。


神殿の奥深く、逆さの足跡はまだ続く。

その先に待つのは、死者の意志を操る教団の影――そして、次なる試練だった。


夜の神殿に、四元素の探偵団の影が長く伸びた。

戦いは始まったばかりであり、三日間の「枷」を背負った彼らの挑戦は、これからさらに深く、恐怖と真実の迷宮へと続くのであった。

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