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第0032話 死者の影

奥へ進むにつれ、空気がますます冷たく重くなる。

蝋燭の炎は震え、床の石目に映る影は異様に伸び、まるで足跡が生き物のように蠢く。


「……これほど規則正しい逆さ歩き、ありえない」

ライネルが低くつぶやき、剣の柄に手をかける。

「魔法だけでは説明できん……誰かの意志が背後にある」


シルヴィアは風を操り、空気の流れを読もうとする。

「空気の温度が部分的に変化してる……ここ、ただの床じゃない」


マリーベルは炎を大きく揺らし、壁に映る影を凝視する。

「魔力の濃淡が変わる……近くに複数の痕跡があるわ」


アリアは床に手を置き、目を閉じる。

「死者の冷気が……複数いる。意志がある」

呼吸を止めるほどの緊張が、四人の間に静かに張り詰める。


そのとき、影のような存在が一瞬、壁の端に浮かんだ。

「……教団か?」

ライネルが声を落とす。


老人――墓守の言葉が思い出される。

「逆さの足跡は、死者を呼び戻し、強制的に歩かせた痕跡だ」


静寂を破るように、床から低い振動が伝わる。

シルヴィアの耳が敏感に反応する。

「動いてる……足跡が勝手に進んでる!」


マリーベルの手が炎を大きく揺らす。

「幻覚じゃない! 物理的に踏まれた痕……まるで誰かが、死者を操っている」


アリアは祈りを口にし、瞳を潤ませた。

「……神に助けを求めるしかない」


ライネルは剣を抜き、構える。

「教団の影……つまり敵は、死そのものを操っている。我々は戦うしかない」


壁の影が、床の足跡が、徐々に蠢き始める。

四人は互いに距離を取り、元素の力を準備する。

炎が踊り、風が渦巻き、土の力が足元を固め、水の精が周囲を浸す――。


闇に沈む神殿の奥で、初めての戦闘の予兆が訪れた。

四元素の探偵団は、死者の影に立ち向かう覚悟を胸に秘める。

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