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第0031話 石の回廊

石の回廊を進むたび、四人の足音が低く響く。

床の冷たさが足の裏を貫き、まるで死者たちの視線に踏まれるような錯覚を覚える。


「……これだけ逆さの足跡が残っているとは」

ライネルは再び屈み込み、足跡の順路を指でたどる。

「全て同じ方向に歩いている……しかも不自然に整然としている」


シルヴィアは風を操り、空気の流れを床に沿わせる。

「風も変な流れを感じる。ここ、普通じゃないわ」


マリーベルは火の炎を大きく揺らし、壁の彫刻に映る影を観察する。

「影の動きが違う……魔力の痕跡がある。けれど、触れると冷たい」

指先に微かに電流のような感覚が走り、背筋が凍る。


そのとき、回廊の奥からかすかな足音が聞こえた。

「……誰かいる」

アリアは息を潜め、手を組む。

「生きている者か、それとも……」


影から現れたのは、背中の曲がった老人だった。

灰色のローブを羽織り、杖をついた彼は、墓守――神殿の古文書と歴史を守る存在である。


「お前たちも“逆さの足跡”に目をつけたか」

声はかすれ、皺深い手には古い羊皮紙が握られていた。

「昔にもあったのだ。罪なき者が処刑され、証拠は……やはり逆の足跡だった」


四人の胸に重苦しい確信が広がる。

この足跡はただの魔法のいたずらではなく、過去に繰り返された悲劇の象徴でもあった。


「……死人に歩かせるなんて……」

アリアの声は震え、ハープの音のようにかすかに揺れる。


「背後に教団の陰謀がある」

ライネルは剣を握り締め、唇を引き結ぶ。

「我々が追うのは、ただの冤罪ではなく、歴史そのものを歪める力だ」


シルヴィアは肩をすくめ、薄く笑う。

「金になれば何でもやるって言ったけど……さすがにこの死臭は金で割り切れないな」


マリーベルの指先の炎が揺れ、床に映る影は異様に長く、まるで見えない者が従っているかのように揺れた。


墓守はさらに紙を開き、古文書を見せる。

「逆さの足跡は、死者を呼び戻し、強制的に歩かせた痕跡。歴史に残る事件の多くが、この儀式によって作られたのだ」


四人は互いに目を合わせた。

冷たい恐怖、義務感、そして探究心――様々な感情が入り混じり、次の行動への決意を固める。

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