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第0295話 恐怖に立ち向かうことも、祝福を受けることもできる……

泡の大地の上で、空気が震える。

黒髪の女が微笑み、泡の中から無数の“複製”を生み出すたび、四人の心は重く沈んだ。

だが、ライネルは剣を握りしめ、冷静さを取り戻した。


「感情に飲まれるな。敵は、形ではなく“認識”だ」


マリーベルは炎の魔法で泡を固め、シルヴィアは俊敏な動きで複製をかわす。

アリアは僧侶として、祈りの力で泡の“魂”を鎮める。


「これが……反論か」


ライネルの言葉に、四人の動きが連動する。

泡の女たちは次々に増えたが、四人の連携によって、形は崩れ、意図は封じられつつあった。


ギルバートが震える声で尋ねる。


「本当に、これで……元の姿に戻るのか?」


ライネルは地面を蹴って一歩前へ進む。


「戻すんじゃない。正体を確かめるんだ。

本物と偽りの区別がつけば、嫌な感情に支配される必要はない」


泡の女のひとつが、青年ギルバートに手を伸ばす。

触れようとする指先は、瞬間、白い膜に変わった。


「偽り……」


ギルバートは自らの目で見極めた。

その瞬間、胸の奥でずっとくすぶっていた“喪失の感情”が小さく砕けた。


アリアが囁く。


「本物は、心の底に残る温かさに触れられる。

偽りは、触れても冷たく、泡のように消える」


マリーベルが火球を使い、泡の女のひとつを囲んで固める。

すると、それは透明な石のように結晶化し、跡形もなく消えた。


シルヴィアは跳びながら、黒髪の女の残像を切り裂く。

すべての泡が制御され、陸地は再び穏やかになった。


「これで、少しは安心できるか?」


ライネルが静かに尋ねる。

ギルバートは膝をつき、息を整えながら頷いた。


「……ええ。

嫌な感情……恐怖も、混乱も、全部、整理できた気がする」


アリアが微笑む。


「世界は、あり得ぬもので溢れている。

でも、私たちは“正体を見極める力”を持っている」


マリーベルも、火球を手で消しながら頷いた。


「感情に支配される必要はない。

行動すれば、理不尽でも形に変えられる」


シルヴィアは短く笑った。


「ふふ、嫌な感情に勝てるなら、ちょっと楽しくなってきたね」


泡の大地はゆっくりと沈み、丘は元の形を取り戻す。

しかし、遥斗と仲間たちは知っていた。

世界は再び増殖するだろう。

次の“泡”が現れた時、彼らはまた、嫌な感情と向き合わなければならない。


夜が明ける頃、四葉亭に戻る四人。

客は少なく、酒場は静まり返っていた。

ギルバートは礼を言い、青年の顔には安堵が戻った。


「ありがとう……あなたたちのおかげで、

少しだけ、存在の正体を信じられそうだ」


ライネルは剣を鞘に収め、窓の外の泡の丘を見やった。


「信じるだけじゃダメだ。

現実を見極め、行動することだ」


シルヴィアが肩をすくめる。


「いやあ、今回の事件も……楽しかったな!」


アリアは微笑みながら、静かに頭を下げる。


「あり得ぬものが現れる世界で、

恐怖に立ち向かうことも、祝福を受けることもできる……

そう、私たちは選べる」


マリーベルは短く息をつき、笑った。

「ふん。次はもっと派手に壊してやるわよ」


泡の丘の静寂の中で、四人の影が長く伸びる。

彼らは、嫌な感情を反論し、整理し、制御する術を手に入れた。

そして、それは、まだ終わらない物語の一章に過ぎなかった。

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