第0029話 三日の期限
将軍が夜霧の中へ姿を消すと、酒場には再び静寂が戻った。
火の杯の炎が揺れるたび、壁に長い影を落とす。
卓の上の地図は、まるで四人を待つかのように置かれたままだった。
「……重い話だったわね」
マリーベルが息をつき、指先の炎を一度吹き消す。
「足跡の偽造、死人の儀式、三日の期限……」
その瞳に宿る光は、怒りと覚悟が入り混じる赤い炎のようだった。
ライネルは剣を軽く指先で弾き、卓に触れる。
「俺たちがやらねば、誰が息子を救う」
眉間の皺は深く、決意の色を帯びている。
アリアは窓際に座り、静かにハープの弦に触れた。
小さな音が、夜の闇に溶け込む。
「三日……命の重さを感じるわ。どうか、無駄にしませんように」
彼女の声には、祈りの力と弱者への思いが交錯していた。
シルヴィアは、そっとコインを握り、口元に笑みを浮かべる。
「まあ……金とスリルがついてくるなら、文句はないかな」
とはいえ、指先の緊張は隠せない。
三日間という短い時間、未知の敵と死者の力に立ち向かう覚悟は、彼女にも重くのしかかっていた。
アシュレイが棚から酒瓶を取り、四人に手渡す。
「……では、乾杯。これから始まる三日間に」
杯を交わす音が、静かな酒場に小さく響いた。
夜が更ける。四葉亭の外には霧が立ち込め、街灯はぼんやりと光る。
四人はそれぞれ、自分の思いを胸に秘めた。
火の炎は揺れ、剣は静かに光り、風はささやき、水は静かに潤む――。
――明日、神殿の石床に足跡を追い、死者の影と対峙する。
その時こそ、真の試練の始まりだった。
酒場の灯火が揺れる中、四元素の探偵団は静かに夜を越えた。




