第0028話 調査
酒場の奥の長テーブルに、四人が自然と腰を下ろす。
将軍も近くの椅子に座り、背筋を伸ばす。
卓の上には、四元素の杯と、古い地図が広げられていた。
「三日で息子を救え」
ライネルは拳を組み、地図を睨みながら低く呟く。
「三日で証拠を集め、真犯人をあぶり出す――並大抵ではない」
「でも、やる価値はあるわ」
マリーベルは魔力を指先に灯し、炎の影を地図の上で揺らす。
「足跡が偽造されているなら、それを暴く術はある。教団の暗躍も、魔法で探知できるはずよ」
シルヴィアは、やや飄々とした口調で言った。
「金になるし、面白そうじゃない。だけど……まさか死人の足跡まで絡むとはね」
指先で小銭を弾きながら、冗談めかして笑う。
だが瞳の奥には、暗い好奇心が光っていた。
アリアは静かに手を組み、額に祈りを置く。
「死者を操る儀式……その罪の重さを思うと、胸が痛むわ。私たちが手を貸すことで、少しでも救えるなら……」
将軍は静かに頷いた。
「その意志だけで十分だ。だが、道中での命の危険、そして精神の疲弊は覚悟せねばならぬ」
酒場の客席では、常連たちが小声で囁き合う。
「四人も一枚岩ではなさそうだな」
「でも、あの将軍を前に誰も反対できないだろう」
――四元素の探偵団、それぞれの心に小さな亀裂が走る。
義務感、金銭欲、好奇心、同情――。異なる動機が交錯し、静かに、しかし確実に、緊張を醸していた。
「……決めるわよ」
ライネルが剣の柄に手をかけ、静かに声を張る。
「期限は三日だ。だが、無実を証明し、息子を救う――それが我らの使命だ」
マリーベルの指先の炎が小さく揺れ、地図の上の影を赤く染めた。
「私もよ。足跡も教団も、全部暴いてやる」
アリアは目を伏せ、祈りを捧げる。
「どうか、少しでも穏やかな道を……」
シルヴィアは肩をすくめ、軽口で言った。
「よし、じゃあ私もやる。金とスリルを稼げるなら、悪くない」
四人の目が互いを映す。
笑顔はなくとも、決意の炎が確かに燃えていた。
将軍は肩の力を抜き、微かに笑った。
「お前たちは……息子に生きる機会を与えてくれる」
夜が深くなる。
四葉亭の灯火は揺らめき、酒場のざわめきは消え、外の霧に溶け込む。
だが四人の胸の奥には、決して消えぬ緊張と責任の影が刻まれた。
――ここから、三日間の「枷」を背負った調査が始まるのだった。




