第0205話 世界は剣と雨の音だけ
四葉亭の外。雨は激しさを増し、石畳を銀色の川に変える。
四人は影と対峙する。
マリーベルが杖を掲げ、火の輪を描く。
「あなたを燃やす、影」
「燃やせば消えると思っているの?」影のシルヴィアは嘲笑する。
「消えない。私の中に、そしてあなたの中に。私たちは同じなのよ」
シルヴィアが剣を抜く。
だがそれは自分を切る刃のようだった。
「私を倒せるなら、やってみな」
影のシルヴィアが応じる。
二人の刃が雨の中でぶつかる。
火花と水滴が混じり合い、冷たい蒸気が立ち上がる。
ライネルは剣を前に構え、静かに割って入る。
「やめろ。争いは、何も生まない」
だが影は笑った。
「争いは、真実の試金石。あなたが逃げるから、私が立つのよ」
そしてアリアが後方から叫ぶ。
「ライネル……あなた、やめて!」
その声は祈りにも、裏切りにも似ていた。
雨の中で、刃と影が絡み合う。
そのとき――アリアが一歩前に出た。
「私が止める。ライネル……でも、あなたじゃない」
彼女は短剣を抜き、ライネルの盾越しに影のシルヴィアへと突き出した。
「裏切り……?」ライネルの声は震える。
アリアは微笑んだ。
「これは、赦しのための裏切り」
影のシルヴィアは笑った。
「赦し? 騎士よ、あなたの剣がそれを拒んでいる。だから私はここにいるのよ」
刃が交錯し、雨が血の色に変わる。
世界は剣と雨の音だけになった。




