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第0198話 枯れ枝
その瞬間、背後で声が響いた。
「やはり来たな」
フードを被った影――彼女を妨げてきた存在が姿を現した。
頭から木が生えた異形の姿に、仲間たちが一斉に武器を構える。
だがルシアは手を上げて制した。
「もう戦う必要はない」
影の男は嗤った。
「何を言う。欲望に抗おうとした結果、俺はこの姿になったのだぞ」
ルシアは本を掲げ、静かに告げた。
「抗うのではなく、受け入れるの。歪みも、痛みも、嫌な感情も――生きる証だから」
その言葉に、影はしばし沈黙した。
やがて、頭から伸びていた木が枯れ枝となり、ぱらぱらと崩れ落ちる。
人の姿へと戻った男は、深く息をつき、消えるように霧の中へと去っていった。




