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第0196話 深呼吸
夜明け前、四葉亭の窓から差し込む光を受け、ルシアは静かに呟いた。
「……嫌な感情なんて、消えるわけじゃない。
でも、それに飲まれる必要もない」
彼女は羊皮紙をたたみ、腰の短剣を確かめ、仲間たちの顔を順に見つめた。
シルヴィアが片目をつむり、冗談めかして言う。
「やっといつものアンタに戻ったみたいだね」
マリーベルが腕を組んで笑う。
「ふん、ようやくやる気を見せたじゃない」
アリアが安堵の笑みを浮かべる。
「ありがとう……置いて行かないでくれて」
ライネルが短く告げる。
「ならば行こう。お前の選んだ道へ」
その言葉が、炎のように胸を照らした。
ルシアはもう一度だけ深呼吸をして、うなずいた。
嫌な感情に反論し、選び取った道を歩む覚悟とともに――。




