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第0018話 時間の操作

夜の街角は、霧と灯りで白く煙るようだった。

 路地の奥、影が蠢く。そこに立つのは――昨夜の祠で逆さの足跡を見た探偵団の四人。


「見える……異常な気配が」

 ライネルは低くつぶやく。石畳をじっと観察しながら、足の動きを読み取ろうとする。

 その視線の先には、微かに時間が歪むような光が、路面を揺らめかせていた。


「よし、暴いてやる!」

 マリーベルは指先に炎を宿し、石畳を叩く。

「この魔法で、嘘も偽装も、全部見えるはず!」


「読めるかどうか勝負よ」

 シルヴィアは影に紛れ、柔らかく微笑む。

「時間操作なんて私の得意分野……焦らず、敵を追い詰めるだけ」


「焦りは禁物。全てを見極めるのです」

 アリアは両手を合わせ、周囲を慎重に見渡す。祈るように声を潜め、気配を吸い込む。


 敵は、すぐに姿を見せたわけではない。

 だが、街灯に映る影の揺らぎ、石畳に刻まれる不自然な足跡……すべてが「逆行」を告げていた。


 ライネルは眉をひそめる。

「これでは、普通の捜査では真相に辿り着けない……」

 昨夜から続く“逆さ足跡”のパターンが、意図的に作られたことを示していた。


「卑怯者め! 炎で焼き尽くす!」

 マリーベルの怒りが、夜の霧に火花のように散る。


「ふふ、仕掛けは読めるわ。油断さえしなければ大丈夫」

 シルヴィアは楽しげに笑い、闇に紛れながら足音を追う。


 だが、敵もまた策を巡らせていた。

 街角の時計の針が、微かに逆回転している。

 ライネルの手元に置かれた資料も、文字がふっと揺れ、過去の状態に戻るような錯覚を起こす。


「……奴も我々と同じ目的か」

 ライネルは唇を引き結ぶ。

 相手の狙いは、ただの混乱ではない。時間操作によって、真実を隠そうとしているのだ。


「面白くなってきたわね」

 シルヴィアは小さく舌を鳴らし、路地を軽やかに駆け抜ける。

「読み合いのゲーム……私の舞台ね」


「邪魔をするなら燃やす!」

 マリーベルは拳を握りしめ、炎の魔力を高める。


 アリアは静かに息を整える。

「対立があっても、真実は揺らがない……」

 その声に四人の結束が再び固まる。


 街の闇に潜む敵は、時間を自在に操る。

 普通の目では動きを追えず、足跡は逆に、そして複雑に折り重なる。

 だが、四人の観察力と魔法、そして直感は少しずつ、わずかな糸口を掴み始めていた。


 ライネルが低く呟く。

「……次に何か動きがあれば、すぐに反応する」


 シルヴィアが笑む。

「ええ、私も待ってるわ。どんな仕掛けでも読み切ってみせる」


 霧に濡れた街角、石畳の上には逆行した足跡の迷宮が続く。

 四人の影はそれを追い、迷いながらも一歩ずつ前に進む。

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