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第0168話 石でも黄金より高くなる

その夜。

四葉亭に石商人の老人が現れた。


腰にぶら下げた袋から、

大小の石を取り出す。


「ほれ見てみな。こっちはただの石ころ。

だが、こっちは王侯貴族が競って買う。

理由か? “病を癒す”と噂されてるからさ」


マリーベルが眉をひそめる。

「そんなの、真実かどうか分からないじゃない」


「真実か虚構かなんて関係ねえ。

人が欲しがれば、ただの石でも黄金より高くなる」


ライネルはその言葉に目を伏せる。

――価値は錯覚によってひっくり返る。

――命の証言もまた、そうなのではないか。


老人は最後に、声をひそめて付け加えた。

「ハンス博士もな、“生き肝”の値段をよく訊いていたよ」

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