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第0166話 博士
翌日の四葉亭。
人いきれと燭台の明かりの中で、ラウルは再び探偵団の前に現れた。
顔色は悪く、手には震えが残っている。
「頼む……どうか、俺の見たことが錯覚ではないと証明してくれ。
あの博士こそ、騎士を殺した犯人だ」
その声には切実な響きがあった。
しかしライネルは眉をひそめた。
「錯覚である可能性を否定するのは危険だ。
依頼を受けるにしても、事実と虚構を秤にかけねばならん」
「だが、もし俺が間違っていたら……俺は何を信じて生きればいい……?」
ラウルの目は、涙の縁を赤く染めていた。
その問いに、アリアの胸が締めつけられる。
「信じるために、真実を探すのです。私たちが……あなたの代わりに」
彼女の静かな声に、場の空気が和らいだ。
こうして探偵団は、依頼を正式に引き受けることとなった。