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第0165話 命を薬に変える欲望
その夜、四葉亭に戻った四人は、常連客たちの噂話を耳にした。
「知ってるか? 山の精《山地乳》が、人の寝息を吸い取るって話を……」
「寝てる間に、夢を現実と取り違えさせるらしいぜ」
「それに、医師ハンスは生き肝を薬にしてるって……俺の隣人も買ったらしい」
杯の音、笑い声、恐怖混じりの囁き。
四人は互いに顔を見合わせた。
――夢と現実の入れ替わり。
――命を薬に変える欲望。
ライネルは深く息を吐き、胸の内に沈む感情を噛み殺した。
それは嫌悪、疑念、そして恐怖。
しかし同時に、その「嫌な感情」こそが、
真実へと至る道の入口のようにも思えてならなかった。