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第0164話 茶番
「まるで茶番ね」マリーベルが机を叩いた。
「目撃したって言い張る商人と、庇い立てする医師の仲間たち。どっちも信じられない!」
「落ち着きなよ、火の子ちゃん」シルヴィアが笑う。
「怒鳴っても死人は戻らないし、証言が増えるわけでもない」
「茶化さないで!」
マリーベルの掌に火花が散り、兵士たちが思わず身を引いた。
アリアは慌てて間に割って入る。
「お願い、二人とも……! 今は争うより、彼が何を見たのかを大事にすべきじゃない?」
ライネルは低く唸る。
「……だが、もし錯覚なら? 見てもいない光景を信じ込んでいるのなら……追う価値はあるのか?」
その一言に、アリアの瞳が大きく揺れた。
「錯覚……でも、それが真実を隠す幕だったとしたら……?」