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第0161話 虚偽かもしれぬ証言
アリアが小声で囁く。
「錯覚かもしれない。でも、錯覚の裏に真実が潜んでいるなら……見捨てられない」
ライネルは眉をひそめ、心中で自らに問いかける。
――虚構と真実が入れ替わる。そんなことがあるのか?
その疑念と共に、彼の胸にじわりと「嫌な感情」が湧いていた。
虚偽かもしれぬ証言を追うことの不快さ。
だが同時に、そこに何か決定的な秘密がある予感。
四人は顔を見合わせた。
土の騎士は渋々うなずき、火の魔法使いは苛立ちながらも席を立つ。
風の盗賊はにやにや笑い、水の僧侶は涙ぐむ商人の背を支える。
「四葉亭探偵団、引き受けようじゃないか」
シルヴィアが言った。
ラウルは安堵の息を吐く。
だがその瞬間、店の窓が音を立てて揺れた。
遠くの鐘が、不吉な夜を告げていた。
――こうして、「逆・目撃者の愚かな錯覚」から始まる事件が、静かに幕を開けた。