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第0145話 群衆
夕暮れ。
探偵団とバネッサは、群衆を伴って地下の入口へ向かっていた。
広場には噂を聞きつけた者たちが押し寄せ、「仇討ちだ!」「雷を討つ女だ!」と囃し立てる。
バネッサは人波の中で、自分の胸に両手を当てた。
その奥底で、かすかな囁きが聞こえる。
――もっと嘘を膨らませよ。
――虚構を現実に変えよ。
それは、彼女だけが聞くことのできる声。
地獄の底から這い上がる悪魔の囁きだった。
彼女は目を伏せ、静かに微笑んだ。
「……ええ、やってみせるわ」
こうして、虚構と現実の境界は音もなく崩れ、
嫌な感情と群衆の熱狂が絡み合う舞台が幕を開けた。