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第0129話 皮肉な笑み
「おや、やはりここにいたか」
ドルグは皮肉な笑みを浮かべながら歩み寄る。
「また厄介な事件に首を突っ込んでいるようだな」
エッジは言葉を失う。ドルグの登場は常に不快で、同時に挑発的だった。
彼は依頼人を追っているのか、それとも“影の同盟”の差し金なのか。
「お前に関わらせるつもりはない」
エッジが吐き捨てる。
だがドルグは肩を竦める。
「関わらずにはいられん。なにせ“嫌な感情”に飲み込まれそうな
お前の顔を見るのが、実に愉快だからな」
嘲りに胸が熱くなる。
嫌な感情に待ったをかけるように、エッジは深く息を吸った。
ここで激情に任せれば、全てが崩れる。
――逃げたい気持ちを抑え、怒りを押し殺す。
その抑制こそが、この章で彼が学ばねばならぬ最初の障害だった。
酒場の空気は一層重苦しくなり、アシュレイでさえ口を開けない。
ただ霧の夜が再び始まろうとしていた。