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第0127話 薬草酒
翌朝。
アシュレイが用意した薬草酒で傷を誤魔化しながら、エッジはカウンターに腰を下ろしていた。
だが心は休まらない。
「顔色が悪いわね」
アシュレイの声が、わずかに揶揄を含む。
エッジは肩をすくめた。
「追っ手が現れた。依頼を進める前に、俺を止めようとしたらしい」
アシュレイは小さく息をついた。
「つまり、誰かはあなたに“この事件を調べさせたくない”ってこと」
女主人の推測は冷静だ。しかし主人公の胸はざわめく。
嫌な感情――恐怖と後悔、それに苛立ちが入り混じる感情。
だが今は、立ち止まるわけにはいかなかった。
ふと視線を横にやると、昨夜の依頼人の姿はすでになかった。
封筒に託された書状が、唯一の手がかり。だが、その中身を開くのが妙に怖かった。
開いた瞬間、自分の過去と現在がつながり、引き戻される予感がしたからだ。