第0122話 真実の鏡
ライネルは床に残る数字と文字の断片を注意深く見つめた。
霧の中で浮かび上がる暗号は、まるで舞台自身が呼吸するかのように微かに揺れている。
「ここまで来た……最後のパターンを解読すれば、怪物は封じられるはずだ」
剣を握る手に力を込め、彼は慎重に声を出す。
シルヴィアは舞台の影を縫うように移動しながら、暗号を読み上げる。
「逆さまの文字も、意味を持って光ってる……面白いわね、まるで生きてるみたい」
微かな笑みを浮かべる背後で、怪物の首の絡みが徐々に弱まっていく。
マリーベルは指先の炎を揺らし、暗号の断片に光を当てて文字を浮かび上がらせる。
「怒りを増幅させてはいけない……冷静に、慎重に」
炎が影を分断し、怪物の半透明の体を徐々に崩していく。
アリアは手を組み、静かに祈りを続ける。
「心を乱さず……犠牲者を出さずに」
祈りの力が舞台全体に作用し、霧の揺れが収まり、怪物の動きが鈍化する。
ライネルは声を低く、断片を繋ぎ合わせる。
「恐怖も虚構も……真実の鏡に映れば消え去る」
暗号の光が舞台全体を包み、怪物の首と顔の絡みは徐々にほどけていった。
シルヴィアは息をのむ。
「やった……制御できてるわ……」
影の怪物は揺らめきながら消え、霧の中に微かに溶け込んでいった。
マリーベルは炎を鎮め、怪物の残滓を確認する。
「怒りも恐怖も、これで完全に力を失った……」
アリアは手を下ろし、深く息をつく。
「犠牲者もなく……怪物は封じられた」
座長は舞台中央で静かに立ち、四人を見つめる。
「……なるほど、ここまで来るとは」
その視線は挑戦の余韻を残しつつも、次の展開への不穏な気配を漂わせていた。
舞台の光が安定し、霧は徐々に静まり、暗号の残光だけが静かに揺れていた。
四人は互いに視線を交わし、息を整える。
ここで得たものは、単なる勝利ではなく、真実を見抜く力と、恐怖を制御する心の力だった。