第0120話 影と光の輪郭
舞台中央で、首と顔が絡み合った怪物が再び現れた。
前回よりも巨大で、半透明の体が暗い舞台を覆い尽くす。
低いうなり声が劇場の壁に反響し、冷気が観客のいない空間を震わせる。
その威圧感に、四人の心拍が一斉に跳ね上がった。
ライネルは剣を構え、目を細めて怪物の動きを見定める。
「奴の動きは前よりも速い……集中しろ、全員」
彼の声は低くとも確かな指示を伴い、四人の心を一つに結びつけた。
シルヴィアは身を低くし、舞台の影を利用して怪物の注意を引きつける。
「目立たず、でも大胆に……動きを見極めるのよ」
その身軽な動きが影と光を交錯させ、怪物の首の絡みを一瞬封じる。
マリーベルは指先の炎を揺らめかせ、怪物の体の輪郭を分断するように光を操る。
「怒りを増幅させるな……冷静に」
炎の光が床に反射し、怪物の動きを抑えつつ、暗号の文字を浮かび上がらせる。
アリアは手を組み、目を閉じて祈る。
「恐怖を見つめ、操られない……我々の心が怪物の力を抑えるの」
彼女の呼吸が整うたび、怪物の動きがわずかに鈍り、低いうなり声も徐々に落ち着きを取り戻す。
首と顔が絡み合った影は、まるで四人の感情に反応するかのように揺れ、巨大な威圧感を舞台全体に放った。
恐怖、怒り、疑念……それらの感情が一瞬でも表に出れば、怪物の力は増幅する。
ライネルは四人の動きを確認しながら、暗号の断片を声に出して読み上げる。
「心を乱すな……恐怖も虚構も、制御できる」
その声が響くと、怪物の動きがわずかに遅くなり、影の絡みが解けるように見えた。
シルヴィアは笑みを浮かべ、影の合間を駆け抜ける。
「怖いけど……面白いわね、まるで生きたパズル」
マリーベルは炎の揺らぎを強め、怪物の体を押さえる。
「怒りを抑える……私たちの心が力の鍵」
アリアは静かに息を整え、祈りを続ける。
「犠牲者を出さず、怪物を封じる……心を乱さずに」
四人の連携が完璧に近づくほど、怪物の暴走は抑えられ、舞台は緊張感に包まれながらも秩序を取り戻していく。
霧が舞台の奥から押し寄せ、影と光の輪郭を揺らしながら、決戦の本番が近づくことを予感させた。