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第0114話 座長の影
劇場〈数列の影〉の空気は、まるで息をひそめているかのように重く濁っていた。
舞台の中央には、座長の影だけが薄暗く揺れる。
ライネルが剣を握り、床の影を読み取る。
「座長は舞台を使い、怪物を現実に呼び出している……」
シルヴィアは軽口を叩きながらも、目は鋭く舞台を追う。
「ふぅ……この座長、ただの劇作家じゃないわね」
マリーベルは炎を指先に灯し、周囲の影を探る。
「怒りや恐怖の反応が、舞台上の影を増幅させている……」
アリアは小さく息を整え、祈るように手を組む。
「犠牲者を増やさないために……慎重に行動しましょう」
座長は、薄く笑みを浮かべながら台詞を逆に読み上げる。
「恐怖は虚構の影。虚構は恐怖の光……」
舞台の奥に、首が絡み合った影がひとつ、ゆっくりと動き始める。