2. 『アイスが悲しそうな顔でこっちを見てきた』
『アイスが悲しそうな顔でこっちを見てきた』
著・辻
【紹介文】
5〜10ページ程のショートエッセイを全14篇収録しています。
(文学フリマ東京40 webカタログより)
5/11(日)の文学フリマ東京40で購入した、辻さんの『アイスが悲しそうな顔でこっちを見てきた』を読んだ。タイトルと表紙の可愛さや、Xで流れてきた辻さんのポストを見て気になり買ったエッセイだ。特に印象に残った話を2つ紹介しようと思う。
◎「コアラのあずまちゃん」
多摩動物公園にいるコアラの「あずまちゃん」はたいてい眠っているので、1日3回見に行ってもずっと背を向けて目をつぶっていて姿を見られなかったという。少し後に富山県の旅館に行き、男性スタッフにいろいろ良くしてもらったけれど、その男性スタッフの名前が「東」と書いて「あずま」さんというそう。
「コアラとスタッフさんが同じ名前って、そんなことある?」
と思いながら読んでいた。東京と富山で離れているとはいえ、何という偶然なのか。その偶然にも驚いてしまった。
◎「男なのになんでネイルなんてしてるの」
緑の髪の人や背中ががっつり開いた服を着ている人もいるというくらい服装が自由な職場で、辻さんもネイルをしようと思ったそう。「ネイルのお兄さん」で覚えてもらえる反面、
「なんや、その気持ち悪い爪は。会社の人はどう思ってるんや?」
「マニキュアしてるじゃない。なんでそんなのしてるわけ。女の子に間違えられるわよ」
と言われたこともあるという。
「自分の爪を見た時にかわいいと思えて、テンションが上がる」
という文にわたし自身も共感した。これはネイルしている人あるあるだと思う。今はメンズネイル専門店もあるけれど、それでも「ネイル=女性がするもの」「男の人がネイルだなんて……」と思っている人がいることも確かだ。ネイルやファッションのことだけではなく、ジェンダー観についても考えさせられた。