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和解

作者: 里田


まるでメビウスの輪のように


「ああ、私がいる場所は裏だった」


こんな、どうにも取り返しのつかないような衝撃的な発見から私の長い長いもがきは始まったように思う。


まったく逆だった、ということを見つけた時に

たとえそれが裏でも表でも

今、ある場所は今ある場所だ


ということを、認めること、わかることからしかできないということがわかった。


それでいいのか

それでいいのか


上へ上へと昇ろうとして、上り続けようとした私は確かに上を目指していたはずだった。


しかし、いつまでたっても周りはみんな

軽々と私よりはるかに簡単そうに上にいる、と感じるばかりだった。





「そうか、ずいぶんとマイナスにいたんだ」



出発点がはるかにマイナス方向からだったのか、と感じた。



本当にずっと戦っていた。勝ち取らねば明日はないと。


生き残らねばならない、と。



間違いを憎んで、間違ってはならないと、正しくあらねばならないと。



追いやって追い詰めて随分疲れた。



戦っている人には戦いの表情が向けられる。

追いやろうとするものを追い返そうとする力が向かってくる。

負けまいとする私には、勝とうとする相手がやってきた。


いつも怒り顔の人が生きる世界では、出会う笑顔は少ないだろう。

それに気づいたのはいつだっただろう。



それで立っていたのは裏だったし、始まったのははるかマイナスからで

それだけ疲れ切った時にまだ、0地点にすらいないと感じた。



それでもそれが真実だったら、そこから始めるしかないんだ。

でも、もう何を頑張る力もわいてはこないんだ。




誰かを理解したいと願って、だれかを助けたいと欲して

だけどそれほど真剣に、自分を理解したいと願ったことがあっただろうか。

どれほど深刻に、隠されてしまっていただろうか。




私の本心はそれを知らせたくて、私の足を躓かせ続けたのかもしれない。




私を見てよ。

私を知ってよ。

私をわかって。

よその、他の誰でもなく。


私よ、私の手をとって。

どうか、私と和解して。

私に、思いやりを向けてください。





疲れてしまったら、思い出す。



主婦だから、家族の食事の支度のために

買い物に行く。


ある日、支度をしながら私は決めた。


―私、今日ね、

私の食べたいものを買いに行くんだ。




そうだ、そうだよ。




なんと不思議なことだろう。


鏡の中の瞳に、急に力がこもった。

光が湧いたようにみえた。

まるで子供のように。


目元がゆるんでいた。

口元の力もゆるんでいた。




ああ、そうか。




「誰かのために」

「何かのために」

言われたから、望まれたから。

やらないといけないから。



それが言い訳。

それが嘘。


自分が決めたのでなかったら。

失敗したら、犠牲になってしまう。


それが嘘。


人のせいにしていたんだ。



自分が決めたから

そうしたいから、する。

それがどんなに小さなことでも。



そう決めることで、生きることってどれだけすっきりするだろう。






私のために、私ができることがある。

自分が決めてそうするんだ。

それが無いと力がわかないんだ。



自分と向き合うってことは。

そのままを見ることなのに。


だけど、大事なところから目をそらしてしまう。



あとで思えば、それもとても小さなことへの気づきだった。



だけど、自分にとって、それは大きな発見だった。

元気がなくなってしまうときには。



ねじれまくった道の果てに、こんがらがった糸の先に。

私を待っている私。




気が付いたら、表にいた。

道はプラスになっていた。


陽が当たっていた。

誰に言われなくてもよかった。

ただ、私がわかっていた。



私はここにいる。






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