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オーガスト日記  作者: フィクサー
第1章 追憶の文月編
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第5話 日常 秘密のポスト編

 あのあと俺はあの家にいるのが気まずくて、すぐに友達の家にゲーム機を持って走った。


 姉についていけばXが勘違いを解いてくれるかもしれないと思ったが、Xが一文を見せてしまえばかつての勉強しろ魔人が復活すると思うと、良くない選択だと思った。


 夕方家に帰ると姉は普通に接してくれた。

 夜には一緒にゲームもしてくれた。

 俺はその優しさについ涙ぐんでしまった。


 姉は以降その事件については触れてこなかったので、ノートの差出人は案の定Xだったのだろう。


 これが、初めてのXとのコミュニケーションだった。




 あれから1週間が過ぎた。


 季節は夏の一番暑い時期に差し掛かり、8月ももう目の前、すぐそこまで来ていた。


 俺は8月が大好きだった。

 なぜなら、夏休みがあるから。


 俺の小学校は基本的に8月中は休みで、約30日も休みがある。

 これが長いか短いかはよく知らないが、俺にとっては満足な期間だ。


 今年の夏休みは、一応宿題でもある日記をつけながら、友達とだらだらゲームでもするか。

 いや、意外と海に行くのもいいな。

 逆に山にハイキングに行くのもありか。


 やはり夏は楽しい想像が膨らむな。



 いまだに姉とはあの話はしていない。

 ここ1週間ほどはXは俺の家には来ていないはずなので、もちろんXとも話はしていない。


 Xが1週間俺の家に来てない理由って、まさかあのノートのせいだったりしないよな。


 俺がノートを盗んで傷ついた、とか。

 でも実際はXが置いてきたんだしなあ。


 もしかして、実はあのノートはめちゃくちゃ大切なもので、俺が勝手に返事書いたのに怒ってる、とか。

 でもそしたらノートを手紙代わりみたくは使わないはずだ。


 3人でゲームするって約束したんだけどなあ。



 ちなみに今は日曜日の昼過ぎ。

 昨日は友達の家に泊まって、朝から夜中までゲームをし続けた。

 こんなにゲームをするのは初めてだったから、慣れない頭痛に苦しみながら、夜が明ける少し前に眠りについた。


 友達の家に泊まる交換条件として、日曜日帰ってきてからは勉強に勤しむことになった。

 せっかくの日曜日なのに、と少しばかり親に反抗心を燃やしながらも、今日は勉強をしておくか、と諦めて家に帰る準備をした。


 俺は友達の家で昼ごはんを食べた後、家に帰りたくない、という重い足を動かしながら、やけに人通りの少ない帰路についた。



 今日は親も姉もいないらしいので、勝手口から家に入る。

 というのも、俺は鍵を無くしやすいので、正式な家の鍵は貰っていない。

 そのため、親と姉がいないとかで家に入れないときのために、勝手口の近くに秘密のポスト、なんて呼んでいる入れ物があって、そこに勝手口の鍵を入れてあるのだ。


 そのポストは、ただ家に来るだけでは絶対に気づくことはできないだろう。

 なんなら、庭に入って勝手口まで来たとしても、初見なら気づくはずがない。

 それほど庭に擬態して、それは存在している。


 俺は秘密のポストを確認して、鍵を取り出して家の中に入った。

 随分と久しぶりのような我が家は、いつもの自分の部屋でさえもなんとなく懐かしく感じた。


 荷物を片付けた後、俺はすぐに自室の席に着いて勉強を始めようとした。

 そこでまたあることに気がついた。



 あってはならないものが、ある。


 というかあるはずがないものが。



 そう、題名のない黄色いノートだった。

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